「かぼちゃの馬車」のシェアハウスオーナーへの融資を一手に引き受けてきたスルガ銀行横浜東口支店の支店長が3月末に、ひっそりと退職していた。ほかの役職員にも退職の動きがあったため、金融庁は5月11日までに、問題の経緯を知る役職員の恣意的な退職や解雇は「検査忌避になる」とスルガ銀行に警告、検査への協力を求めた。立ち入り検査中の金融庁は、「(スルガ銀行の)非協力的な姿勢が際立つ」(金融庁幹部)と苛立ちを強めている。金融庁は退職者に直接聞き取り調査ができないという盲点を突かれた格好になった。
「真っ当なビジネスに戻して、『群れ』に紛れてしまうなら(スルガ銀行のビジネスモデルは)本物ではなかったということだ」
今頃になって金融庁の幹部はこう言い、かつて賞賛したスルガ銀行を突き放した。金融庁は2017年秋に公表した金融レポートに、地銀106行の本業の利益率を表したグラフを載せた。スルガ銀行は、このグラフの右上にある。利益率や利益の伸び率が突出して高かったからだ。貸出金利回りは3.6%超。1%強の有力地銀や、0%台に落ち込んだメガバンクと比べて、圧倒的な存在感をみせていた。
だが、この高収益は、審査書類の改竄を認識しながら融資する“違法行為”によって生み出されていたものだった。スルガ銀行が、まともな融資に戻れば、金融庁幹部が切って捨てた“群れ”に入るのだろう。それにしても、真っ当な営業をしている地銀を“群れ”などと侮蔑していいのだろうか。
5月16日付産経新聞は、次のように報じている。
「スルガ銀行への監視の目が行き届かなかったばかりか、むしろその経営を模範として推奨してきた金融庁への批判も避けられない」
「実際、金融庁の森信親長官の退任もささやかれ始めた。麻生太郎財務相や菅義偉官房庁長官からの信任も厚く、日銀の黒田東彦総裁の再任もあり、金融庁初の4期目を務める見方が強まっていたが、責任を問う声も出てきた。後任候補には、氷見野良三国際審議官、三井秀範検査局長、遠藤俊英監督局長の名も取り沙汰されている」