シダックスがカラオケの運営事業から撤退すると発表し、激震が走った。カラオケボックス「シダックス」の運営子会社の持ち株81%を6月7日に、「カラオケ館」を運営するB&Vに売却するという。
シダックスはかつて約300店ものカラオケ店を展開していたが、近年は店舗の閉鎖が相次ぎ、2017年度末(18年3月末)時点では約180店にまで激減した。その前の16年度に大量閉鎖を断行、約3割にあたる80店が減り話題となった。特に、旗艦カラオケ店だった「渋谷シダックスビレッジクラブ」を閉鎖したことは象徴的な出来事として伝えられた。
シダックスのカラオケ事業の業績は悪化していた。07年度には売上高は629億円あったが、その後は減少が続き、直近の17年度は170億円にまで減った。同事業の営業損益は10億円の赤字と3期連続で赤字となっている。
カラオケ事業の不振に伴い、シダックス自体も業績不振にあえぐ。07年度には売上高が2260億円あったが、17年度は1428億円にまで激減。純損益は13億円の赤字と3期連続で赤字となっている。
なぜシダックスのカラオケ事業は苦戦を強いられたのか。カラオケ人口が減っていると考えられそうだが、どうやらそうではないようだ。
全国カラオケ事業者協会が発表しているカラオケの利用人口の推移を見てみると、むしろ近年は増加傾向にあることがわかる。1995年度には5850万人いたが、その後は一時減少し、07年度には4700万人を割ったものの、それ以降は4600万人台の横ばいで推移し、13年度には4700万人台に乗せ、その後は増加傾向を示している。ボックスの施設数も近年は増加傾向にある。
かつては景気後退や娯楽の多様化によりカラオケの利用人口は縮小が続いていたが、近年は手軽に利用できる娯楽として少しずつ盛り返している。さらに、近年は従来と異なる利用法が広がっていることも追い風となっている。たとえば、ボックスを1人で利用する「ひとりカラオケ」が増えたほか、仕事や勉強、休憩など、歌うこと以外の用途で利用する人も増えている。
こうした状況を受け、シダックス以外の大手は好調だ。「ビッグエコー」を展開する第一興商の17年度(18年3月期)のカラオケ事業売上高は前年比6.6%増の610億円だった。「カラオケマック」40店をチェーン展開する企業を子会社化したことも奏功し、大きく伸びた。5年前の12年度から売上高は34%増えている。
また、「まねきねこ」を展開するコシダカホールディングスの17年度(17年8月期)のカラオケ事業売上高は前年比7.1%増の296億円だった。新規出店を推し進め、店舗数が大きく増えたことが寄与した。5年前の12年度から売上高は60%増えている。
このように、カラオケ市場で成長している企業は存在する。では、なぜシダックスは苦戦を強いられたのか。
まず考えられるのが立地戦略の誤算だろう。シダックスは主に郊外の幹線道路沿いに大型店を出店し、飲み会の2次会需要を取り込むなどで業績を伸ばした。しかし、飲酒に対する規制が厳しくなったことで、郊外立地が逆に弱みとなってしまった。また、郊外店の場合、ひとりカラオケや仕事などで利用する人を取り込むことが難しい。そのため、集客が困難を極めるようになった。