料金の高さも苦戦の要因だろう。「歌広場」「ジャンボカラオケ広場」「まねきねこ」といった低価格のカラオケチェーンが台頭したことで、シダックスの料金の高さが際立つようになった。
シダックスの利用料金は高額だ。料金は店舗によって異なるが、たとえば、「シダックス 新宿歌舞伎町クラブ」(東京都新宿区)の平日昼間30分の料金(1人・非会員)は現在300円となっている。一方、同店に隣接する「カラオケ館 歌舞伎町本店」(同)は129円とより低額だ。もちろん、その他の条件が異なるため両者を単純比較することはできないが、ある程度の目安にはなるだろう。いずれにしても、シダックスの利用料金は業界のなかでは高額といえる。
利用料金以外も高額だ。飲み物や料理を見てみると、生ビール(中)が1杯630円、カクテルのほとんどが620円、料理単品レギュラーメニューの1皿の料金で一番多いのが600円台となっている。いずれも競合他店と比べて高額といえるだろう。そして、シダックスは1オーダー制を取り入れており、1人当たり380円以上の飲食メニューを1品以上注文しなければならず、飲食を求めない人にとっては余計な費用が発生することになる。気軽さという点では、かなり難があるといえる。
シダックスの料理と飲み物が高額なのは、それらの豪華さを売りにしてきたからだ。同社は祖業が給食で、現在も企業や病院などの社食・給食の受託運営を行っており、またワインの製造を行うなど飲食の分野に造詣が深い。それらで培ったノウハウを生かすかたちでカラオケに豪華な飲食を提供するスタイルを確立し、それを売りとして差別化を図ってきた。ただ、最近はそれが足かせになっていた。
一方、低価格チェーンは利用料金や料理・飲み物の料金が安いだけでなく、1オーダー制がなかったり、飲食物の持ち込みができるチェーン店もあり、気軽に利用することができる。これは、ひとりカラオケや仕事などで利用する人にとって都合がよい。こういった人たちは必ずしも飲食物が必要ではないからだ。
近年のひとりカラオケなどの需要の高まりは、低価格チェーンの追い風となる一方、シダックスにとっては逆風になったといえる。
不振に陥ったシダックスは今後、カラオケ館のB&Vが運営することになった。シダックスは郊外が中心だが、カラオケ館は繁華街が中心のため、両チェーンは共存できるとみているようだ。ただ、少子高齢化の進展で主力顧客の若年層の人口は減っていくので、今後は予断を許さない。そうしたなか、シダックスはどう変わっていくのか。今後の展開が注目される。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。