企業はゴーイング・コンサーンである。企業は長期にわたって事業を運営し、収益を獲得することが求められる。そのためには、継続的に優秀な経営者を選ぶ必要がある。多くの企業が直面するのが後継者の問題だ。
この問題は、中小企業から大企業まで共通だ。中小企業の場合、休廃業・解散件数は増加傾向にある。2016年、休・廃業した企業の数は2万9000件を超えた。理由は、事業承継がスムーズにいかないというもの。大企業でも、後継者選びは難しい。経営者の高齢化によって後継者の育成、あるいは確保は企業の死活問題だ。世界全体で変化のスピードも加速している。そのなかで求められる資質は、変化を見極め、成長に必要な発想を実行する能力である。
孫正義会長率いるソフトバンクも同じ問題を抱える。適切な後継者を見つけようとしているが、今のところ有望な人材が見当たらないようだ。孫会長の見据えるビジネス・ビジョンを共有できるのが、どのような人物なのかは大いに注目したい。それは、多くの企業の後継者選びにも参考になるポイントが多い。
デジタル帝国を目指すソフトバンク
ソフトバンクの経営戦略を考えるキーワードは、“デジタル化”だ。孫会長は、デジタル化に関するテクノロジーを制覇するものが、今後の競争を優位に進めることができると考えている。端的に言えば、同氏はソフトバンクという企業を人工知能(AI)やネットワークテクノロジーを用いた“デジタル帝国”にしようとしている。
デジタル化とは、ビジネスそのものの変革だ。リアル(社会)での経済などに関する活動が、ネットワークに取り込まれることと考えればよい。小売業界がアマゾンに取り込まれてきたことは、そのよい例だ。デジタル化に伴い、企業の組織、経営管理など従来の発想が大きく変化する。それは、わたしたちの生き方=文化にも影響するだろう。
世界全体でネットワークテクノロジーの発達と普及が進むに伴い、デジタル化は加速する。それによって、わたしたちは従来には想像し得なかった変化に直面するだろう。どういった変化があるかといえば、市場経済にはなじまないと思われていた国や地域が、突如として有望な市場に変貌することが考えられる。
たとえば、アフリカ地域では携帯電話やスマートフォンが普及している。ネットワークテクノロジーの発達によって、固定通信網を敷設したインフラ整備の必要性は低下した。その分、政府は公衆衛生などに財源を配分できる。