古くは鎌倉時代に起源を持つといわれる質屋。その土地の有力者が一般の人々にお金を貸すための商売として生まれたのが、そもそもの始まりとされているが、700年の時を超えて、今なお質屋は街の片隅でひっそりと存在している。
しかし、今や当座をしのぐために質屋を利用する人など皆無だろう。現代に残る質屋も、決して大々的に商売をしているようには見えない。中古買取品店やリサイクルショップ、さらにはフリマアプリなどが乱立する現代で、なぜ質屋は潰れずに残っているのか? 謎多き質屋の儲けのカラクリに迫る。
質屋の商売は金融と小売りの“いいとこ取り”
「質屋のビジネスモデルは、続ければ続けるほど儲かる仕組みになっています。だからこそ、何百年間も廃れずに生き残ってきたのでしょう」と分析するのは、経営コンサルタントの新井健一氏だ。
質屋の基本的なビジネスモデルは、顧客が持ってきた“質草”を預かり、それに見合った金額を顧客に貸し付けるというもの。質草を預けている間、顧客は質屋に利息を払う必要があるが、元金を払えば質草は手元に戻ってくる。
ただし、流質期限(一般的に3カ月)までに元利金を払えなければ、預けた品物は質屋のものになる。そのかわり、顧客は元金も利息も払う必要がなくなる。
「質屋のビジネスを分解してみると、小売りと金融の2つのビジネスモデルが組み合わさった商売だということがわかります。『お金を貸して、その利息を得る』という金融業の仕組みと、『仕入れをして販売する』という小売業の仕組み。この2つを合わせたのが質屋なのです」(新井氏)
金融業と小売業。この2つのビジネスモデルは、組み合わせることでそれぞれのリスクがうまいこと相殺されるようになっているという。「その仕組みこそ、質屋が儲かるカラクリ」と新井氏は指摘する。
「金融業がお金を貸し付けるのに対し、質屋は“質草”という現物、いわば担保を預かっているため、貸付金を回収するというリスクが発生しません。客が利息を払わずに逃げたとしても質草は残るので、それを商品として販売すればいいだけなんです」(同)
さらに、質草を預かっている間は利息が発生するため、在庫が多ければ多いほど利息で儲けることができる。つまり、小売業にとって死活問題である在庫リスクの概念がない。それどころか、商品(=質草)は顧客が持ってきてくれるので、仕入れの必要もないというわけだ。
「普通のお店の場合、宣伝や広告に多額のお金をかけるものですが、質屋は特殊です。お金を借りるという行為は、周囲には気づかれたくないもの。大々的に『高く買います』と宣伝すると、かえってお客を遠ざけることもあります」(同)
そこで、質屋の重要な宣伝方法となったのが、“口コミ”だ。
「質屋を利用した人が『あの店は高いお金で貸し付けてくれる』と内緒話のように話すのは、同じくお金を工面したいと考える人。店を必要とするコミュニティ内で情報がめぐっていくので、広告宣伝費は最小限で済むわけです」(同)
確実かつ切実な口コミが、質屋を支え続けてきたといっても過言ではない。
ショッピングモールに出店する現代型質屋も
絶妙なビジネスモデルで生き残ってきた質屋だが、ここ数年で取り巻く環境は大きく変わっている。中古買取品店やリサイクルショップなどの競合が多数登場したこともあり、これまでのように口コミに頼るだけの営業方法では生き残ることが難しくなってきた。質屋業界もイメージチェンジをする時代がやってきたのだ。