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ストロング系缶チューハイ、急速にブーム終息のワケ…広まる「微アル」志向

文=編集部
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アサヒ ビアリー(「Amazon」のサイトより)

 サッポロホールディングス(HD)の2021年6月中間決算は、本業の儲けを示す営業利益が34億円の赤字だった。新型コロナウイルス感染拡大に伴う酒類の提供中止により、外食事業と業務用ビールの販売が苦戦した。赤字は4年連続。一方、営業利益と純利益がともに黒字だったアサヒグループホールディングス(GHD)なども国内ビール事業は苦戦し、海外事業などで補った。主力商品のブランド力向上や健康志向などを掲げ、各社とも反転攻勢を図る。

恵比寿でエビス醸造

 サッポロHD傘下のサッポロビールは「エビスビール」といった伝統あるブランドを抱え、チューハイなどでも他社をうならせる商品があるものの、「マーケティング力が弱い」(ライバル社)ことが大きな課題。

 中間決算では、エビス缶ビールの売上数量は前年同期比5%増と家庭向けが好調だった一方、ビアホール「銀座ライオン」や「YEBISU BAR」、出荷先の飲食店は緊急事態宣言下で休業を余儀なくされた。家庭向けだけでは外食不振をカバーしきれなかった。これはアサヒHDなど他社も同じ状況だ。

 サッポロビールは中長期的にエビスに磨きをかけるため、23年までに東京都渋谷区恵比寿でエビスビールなどの生産再開を検討している。1988年まで恵比寿工場で醸造していたエビスはある意味、近年流行っているクラフトビールの先駆け的なブランド。工場閉鎖後は商業施設「恵比寿ガーデンプレイス」に生まれ変わった。恵比寿ガーデンプレイスの一角にあるエビスビール記念館でビール醸造を再開する方向。出来立てのビールを味わえる施設も設ける。

 近年の消費者は「コト消費」を重視する傾向があり、商品が生まれた歴史やバックグラウンドなどに関心を寄せる。今回の計画はそうした消費者の心をつかむ狙いがありそうだ。出来立てのエビスを味わって感動を覚えてもらい、家庭や外食でも飲む機会を増やす好循環を作りたい考えだ。

健康志向で微アル

 コロナ禍で改めて生活習慣を見直す消費者が増えるなか、各社とも健康志向に重点を置く。アサヒGHD傘下のアサヒビールはアルコール度数が極端に低い「微アル」市場に着目。アルコール度数が0.5%の「アサヒ ビアリー」を3月末に首都圏を中心に先行発売し、6月末から全国展開を始めた。アルコール度数は基幹ブランド「スーパードライ」の10分の1で、売れ行きは順調という。

 消費者からは「翌日に響かなくていい」「酔わずに美味しく飲める」などの声が寄せられている。9月から飲食店にも出荷している。サッポロビールもアサヒビールに追随し、アルコール度数0.7%でビールテイスト飲料「ザ・ドラフティ」を9月に投入した。

ストロング系控えめに

 健康意識の高まりなどを踏まえ、各社とも市場の拡大が続くストロング系の缶チューハイを全面に押し出す戦略をやめた。ストロングはアルコール度数が7〜9%のチューハイで、一本飲むだけでも十分に酔えるため、人気を博していた。

 しかし、度数の高さから「危険ドラッグ」と揶揄されるようになった。厚生労働省によると、生活習慣病のリスクを高める1日平均の純アルコール摂取量は、男性が40グラム以上、女性が20グラム以上。男女とも500ミリリットル(度数9%)のストロング缶1本を飲めば、簡単に目安を超えてしまう。

 コロナ禍での食生活の改善に加え、政府がメーカーに対して、缶にアルコールをグラムで示すことの検討を要請したことも相まって、以前のようにストロング系のテレビコマーシャルを見る機会は減った。オリオンビールはすでにストロング系チューハイから撤退した。

飲み放題終了

 キリンHD傘下のレストラン「キリンシティ」は3月に飲み放題プランを終了した。健康に配慮し多量飲酒を防ぎ、食事をゆっくり味わってもらうことが狙い。

 世界ではアルコール摂取が健康リスクにつながるとの認識が高まっている。他方、国内ビールメーカーは現在も熾烈なシェア争いを演じており、問題を放置していては投資家から批判を浴びかねない。ESG(環境・社会・企業統治)の観点から、キリンシティが過度の飲酒是正に先鞭をつけた意義は大きい。

 人口減少が進み、今後も国内市場の先細りは避けられない。こうした状況で、シェア争いに明け暮れることはもはや無意味。いずれ国外でも少子化に直面する国もあるため、海外事業で補填する構造もそのうち崩れる。健康志向に配慮しつつ、高品質な商品開発を継続することが国内市場維持につながりそうだ。

BusinessJournal編集部

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