10年ほど前になるが、新エネルギーの開発を進めていると称する合同会社の社員権販売で名前を使われたことがある。もちろんつゆ知らぬことで、勧誘を受けた方々から直接電話で問い合わせを受けて、初めてその事実を知った。ほとんどが東京の多摩地域に在住の方であり、おそらくはそのエリアを担当する者が名前を騙ったのだろう。
なかにはすでに数百万円の社員権を購入した高齢の女性もいて、事後の対応を相談されたが、どうにもならなかった。なぜなら購入後、何回か少額の配当を受けており、詐欺に該当する十分な条件を満たしていなかったからだ。
また合同会社の社員権の販売は、証券会社でなければ許されていない未公開株の販売とは異なり、金融商品取引業者の登録は不要であり、それ自体も違法にはならない。顛末はわからないが、うやむやになってしまったのだろう。
この件の少し後であろうか、露見したのが創造学園大学の学校債を用いた詐欺だった。最終的に破産で幕を閉じた同学園が、その場しのぎの資金集めのために用いたのが、学校債の発行、販売だった。外部のセールス集団を雇って、元本保証、並外れた利率(年5%以上)を謳い文句に販売したのだから悪辣である。総発行額は1億数千万円、購入者は数十名。利子はもとより元本もほとんど返還されなかった。
学校債の恐ろしい点は、合同会社の社員権や未公開株式、債券などと比較して信用度、イメージの面で勝る点であろう。誰しも学校にはお世話になるわけで、好悪はともかくも、その法人が発行した債券がデフォルトするとは想定しないものだ。
しかし、もはや大学をはじめ学校が潰れない時代が終わっているのは明らかだ。今後も淘汰の波が襲う可能性が高いことは、昨年末に読売新聞がスクープした日本私立学校振興・共済事業団の実施した私立大学の経営状況の調査からも明らかだろう。
記事によれば日本私立学校振興・共済事業団は私立大学・短大を運営する660の学校法人のうち、112法人は現状のままでは、遠からず破綻の危険があると結論づけている。要するに大学を運営する学校法人の約2割は経営難の状態にあるわけだ。
運営資金の手当てに苦しむ学校法人が頼みとするのは、国や地方自治体からの補助金や、卒業生や保護者からの寄付金だが、特に小規模法人の場合、多くは期待できない。超低金利局面の長期化で苦境にある金融機関も、経営不振の法人に対して、そうそう良い顔はしてくれないだろう。
その点、学校債はわずかな金利負担で4年後の償還期間まで、まとまった資金を調達できる。しかも、規制や監視もきわめて緩い。