大学に入学する年齢である18歳の人口が、今年から減少する「2018年問題」。私立大学の約4割がすでに定員割れの状態にあり、これから本格的な淘汰の時代がやってくる。大学が再編や統合を迫られた時、大学で働く教職員はどうなるのか――。
この点で注目されているのが、奈良学園大学をめぐる裁判だ。この大学では約40人の教員がリストラにあい、最終的に解雇された8人が大学を運営する法人を訴えている。筆者は奈良学園大学を訪れ、解雇された元教員を取材した。
教員約40人をリストラ
「私たちは、大学による学部の再編失敗のしわ寄せによって解雇されました。こんな解雇が許されたら、大学改革や再編の名の下で理不尽な解雇が可能になります。絶対に許すわけにはいきません」
こう憤るのは、2017年3月末に奈良学園大学を解雇された川本正知さん(64)。京都大学大学院文学研究科博士後期課程を単位取得退学し、複数の大学・短大で非常勤講師を勤めたあと、1989年に奈良学園大学の前身、奈良産業大学に講師として勤務。1999年からは教授の立場にあった。
実は、同じ時期に職を失った教員は川本さんだけではない。13年11月、約40人の教員が17年3月までに転退職するよう迫られた。多くの教員は他大学に移るなどして若干の優遇措置とひきかえに大学を去ったが、その他の教員は雇い止めされたほか、教職員組合を結成して最後まで交渉を試みた川本さんら8人が解雇された。
8人は大学を運営する学校法人奈良学園を相手取り、地位の確認などを求めて17年4月に奈良地方裁判所に提訴。16年11月には、奈良県労働委員会に不当労働行為の救済の申し立てもしている。しかし、両者の主張は対立したままで、いまだ解決の糸口を見いだせていない。
明確なのは、川本さんをはじめ、リストラされた約40人に非がないことだ。リストラの直接的な原因は、学部の再編の失敗にあった。
学部再編を申請するも文部科学省から「警告」
奈良学園大学は1984年、奈良県生駒郡三郷町に奈良産業大学として開学。硬式野球部は過去に多くのプロ野球選手を輩出している強豪チームで、今年6月に開催される全日本大学野球選手権大会にも出場する。筆者が訪れた日は3月の春休み中だったが、練習があるのか、ユニフォーム姿の部員がキャンパス内を歩いていた。