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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

日本の大学がフィリピンの名門大学の足元にも及ばない実態…出席講義数は日本の2倍

文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer

大学の体制

 
 日本大学の場合、大学の下は学部という組織となるが、フィリピンの場合、大学と学部の間に「カレッジ」や「スクール」と呼ばれる組織が存在する。長きにわたり統治されてきたアメリカの大学のシステムが基礎となっている。たとえば、筆者はデ・ラ・サール大学のラモンVデル・ロザリオ・カレッジ・オブ・ビジネスのマーケティング&アドバタイジング学部に在籍している。このカレッジにはマーケティング以外にも、マネジメント、ファイナンスなど多くの学部があり、数多くの専門科目が用意されている。一方、日本の大学は経営学部や商学部など大括りになっている。

 日本の大学の多くは2学期制であり、各学期15週程度となっている。通常、1科目を修了するために、学生は週1回90分の講義に出席しなければならない。一方、フィリピンでも2学期制を採用する大学が多いものの、中身がまったく異なる。1科目が90分講義×週2回となっており、大雑把にいえば、フィリピンの学生は日本の学生の2倍の講義に出席せねばならない。

 さらに、デ・ラ・サール大学の場合は3学期制となっており、各学期には入学式、卒業式、日本の1年分に相当する講義数があるため、こちらの1年は実質的には日本の3年に相当する。3学期制を導入している狙いは、3年で卒業可能、さらには2年を追加し、5年でダブルディグリー(たとえば経営学と法学の2つの学士)を取得可能とし、大学をアピールすることにあるようだ。

 教育効果の向上を目的とし、講義には人数制限がある。学部45名、大学院15名が上限となっており、基本的に日本のような何百人規模の大講義はない。学生の勉学への意欲は極めて高く、さらにフィリピンの国民性かもしれないが、積極的に手を挙げて発言する学生が多い。プレゼンにおいても、態度や話し方などは実に立派なものである。

 アメリカの大学でも感じたことだが、こちらの学生の間には、「勉強でがんばることはクール(かっこいい)」といった雰囲気が広く浸透しているような気がする。こうした雰囲気のなか、教えるこちらのモチベーションも自然と高まってくる。

 もっとも、日本と異なり、こちらの企業は採用にあたり、単に大学の名前だけでなく、大学での成績を重視する場合が多く、学生もがんばらざるを得ないといった事情もあるようだ。
(文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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