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中国経済の減速
ロームの業績を考える上で、中国経済の動向も軽視できない。同社の地域別売上高を見ると、全体の57%の売上高がアジアからもたらされている。詳細は公表されていないが、このうちのかなりの部分が中国で獲得されているはずだ。
米中貿易戦争への懸念などを受けて中国経済の減速懸念は高まっている。わが国の中国向け工作機械受注の減少は、中国における設備投資の増加ペースが鈍化していることにほかならない。ロームが産業用機械などに搭載される半導体需要を取り込むことは難しくなっていると考えられる。
それに加え、中国経済の動向はドイツをはじめとする欧州経済の減速にもつながる。すでにユーロ圏の景況感は悪化している。中国経済の減速に伴い、独自動車メーカーの業績悪化などが顕在化すると、ロームの車載関連事業の収益に下押し圧力がかかることは避けられないかもしれない。
このように考えると、ロームは新しい収益源を獲得しなければならない局面を迎えつつある。米国の株式市場では、アップルの株価下落とは対照的に、アマゾンの株価が底堅さを維持している。この背景には、家庭用IoTデバイスともいえるスマートスピーカーへの期待などがあるといえるだろう。ロームは車載用を目的に音声関連の半導体を生産している。加えて、スマートスピーカーなどに用いられる電源ICの供給も行っている。こうした分野への取り組みは、スマホ需要などの落ち込みをカバーする上で一定の役割を果たすだろう。
その上で、ロームには今後の産業動向を見極めつつ、新しい需要の取り込みに向けて戦略を強化する必要がある。これまでに蓄積してきた経営資源を生かしつつ、ダイナミックに同社が戦略を策定・実行して環境の変化に対応していくことを期待したい。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)
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