2018年の年末にかけて、わが国の企業業績の悪化を懸念する市場参加者が増えた。その背景には、米中の貿易戦争の激化懸念やスマートフォン(スマホ)需要の減退などを受けて、世界のIT先端企業の業績悪化懸念が高まってきたことがある。
その変化を、いち早く反映してきた銘柄の一つにロームがある。16年半ばから17年年末まで、同社の株価は4000円程度から1万3000円程度の水準まで大幅に上昇した。一転して、18年を通して同社の株価は下落し、年末は7000円台をつけた。18年のロームの株価騰落率はマイナス43%を超えた。
アップルのiPhoneなどスマホの販売不振、米中貿易戦争への懸念に押された中国企業の設備投資抑制などは、ロームの業績悪化懸念を高めるだろう。そのなかで、ロームがどのようにして当面の収益を確保しつつ、より長い目で成長に向けた取り組みを強化していくかが問われている。リーマンショック後、ロームはいち早くスマホの需要に着目して必要な取り組みを進めてきたと考えられる。経済環境の変化を受けて業績の下押し圧力が高まりやすくなっているなか、同社がどのように変化に対応し、収益力を高めることができるかに注目が集まる。
車載需要などを重視するローム
ロームはLSI(Large-scale Integrated Circuit、大規模集積回路)や半導体素子事業を中核とするわが国の電機メーカーである。現在、ロームは民生向けの事業よりも、産業用事業の競争力向上を重視している。それが同社の成長戦略だ。同社は、今後の普及が期待されている電気自動車や自動運転技術の実用化、工場の自動化などに必要な半導体の供給能力を強化し、業績を拡大しようとしている。そのために、同社はパワー半導体(SiC<シリコンカーバイド>半導体)事業の強化などに取り組み、国内外での買収を実行してきた。
ロームの成長戦略は、わが国の経済と、それを取り巻く外部環境の変化への適応を重視している。日本では少子化と高齢化、人口の減少が3つセットで同時に進んでいる。そのなかで、需要の拡大を期待することは難しい。どうしても、海外の需要を獲得する必要性が増す。