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日本電産、成長神話に陰りか…日本経済、永守会長ですら見誤るほどの未知なる変化

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 この変化を受けて、日本電産は車載および家電・商業・産業用のモーター事業を重点事業に定め、小型モーターの開発で蓄積してきたテクノロジーやノウハウの応用を進めてきた。2017年度決算では、売り上げの35%を家電・商業・産業用モーター事業が占め、精密小型モーター事業の割合は30%に低下した。また、車載関連事業が売り上げに占める割合は20%程度にまで上昇している。

 今後の成長戦略として日本電産が重視するのが、自動車のEV化への対応だ。同社は2020年度の連結売上高を2兆円に押し上げようとしている。計画では、7000億円~1兆円程度の売り上げを車載分野で確保することが目指されている。具体的には、EVやPHVに使われる駆動システム(トラクションモーター)、パワーステアリングやブレーキ用モーターなどの供給能力の向上が重視されている。

尋常ではない景気変化の本質

 
 このように、日本電産は世界経済の環境の変化に、自社の収益構造を適応させてきた。それがうまく進んだため、同社の売り上げは拡大してきたのである。特に重要なのが、米国と中国を中心にIT先端分野での技術・商品・サービスの開発が進んだことだ。IT先端分野は、今後の世界経済を支える成長の源泉としても注目を集めている。

 一転して、永守氏は「尋常ではない変化が起きた」という表現で、急速に事業環境が悪化しているとの認識を示した。この表現には、かなりの危機感がある。背景には、これまでの世界経済の成長と安定を支えてきたIT先端分野でのイノベーションが停滞し始めているとの認識があるのだろう。永守氏は工場の統廃合などへの注力にも言及した。その背景には、今は守りを固めなければならないという認識があるはずだ。

 特に、中国経済からの影響は大きい。2017年末ごろまで中国経済は米国経済と共に世界経済を支えてきた。しかし、足許では減速が鮮明だ(GDP成長率が低下している)。2018年、中国では経済を支えてきた固定資産への投資が減少した。その上、米中貿易戦争への懸念や景気悪化の影響から個人消費が落ち込み、景況感が弱含んでいる。中国企業は先行きへの警戒心を強め、設備投資を抑制している。この結果、昨年11月、中国における日本電産の生産台数は、前年同月比30%も減少した。

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