新潟県長岡市に本社がある原信ナルス・ホールディングスは10月1日、群馬県が地盤のフレッセイ(年商620億円)を株式交換方式で完全子会社にし、統合後、アクシアルリテイリングに社名を変更する。原信とフレッセイは共同仕入れやPB商品、さらにはソフトウェアの開発で連携して経営体質を強化。イオンや、北海道から青森、岩手へと南下してきたアークス(東証1部)に対抗する。
食品スーパー業界は、消費増税を控えて波立っている。まず、流通の巨大資本であるイオンの全国制覇にどう対抗していくかだ。コンビニエンスストアが食品スーパーの営業を浸食しているのは確かだ。さらに、異業種からのM&A(企業の合併・買収)にさらされている。
人口の減少、地方の過疎化、店舗の老朽化は着実に進んでいる。経営トップの後継者がいないという深刻な問題もある。「消費増税を引き金に再編が加速する」と指摘するアナリストは多い。
●再編の核はイオンとヨーカ堂
イトーヨーカ堂は北海道・帯広市を本拠とするダイイチ(札幌、東証ジャスダック)が8月26日付で実施する第三者割当増資を引き受け、株式30%を保有する筆頭株主となる。ダイイチのお膝元の帯広市や旭川市でのライバル店は、すでにアークスの軍門に下っており、ダイイチとしても後ろ盾となる企業が欲しかった。
ダイイチがヨーカ堂グループ入りしたことにより、北海道の独立系スーパーは北雄ラッキー(ジャスダック)だけになる。メインバンクの北洋銀行が、北雄ラッキーの提携先探しに動くかもしれない。イオンがどうするかにかかっているが、北雄ラッキーの財務内容はそれほど良くはないといわれており、イオンがアークスにどう対抗していくのかがカギとなる。
北海道、青森、岩手でトップシェアを誇るアークスは札幌市が本社。南下政策を進めるがイオンがアークスの前に立ちはだかっている。青森のユニバース、宮城のジョイスを取り込んだことで、イオンがアークス包囲網を敷いたわけだ。秋田、宮城県の地場スーパーの陣取り合戦でも「イオンの攻勢に遭って苦戦中」(地元の中堅スーパーの経営者)という。
●異業種の動きも活発化
長崎屋の買収で成功を収めたドン・キホーテや、首都圏の食品スーパー・マルヤをTOBしたゼンショーホールディングスが水面下で活発に動いている。狙っているのは、首都圏で10店舗以上あるチェーンだろう。
ドラッグストア業界第2位のサンドラッグは、シニア向けのコンビニを立ち上げた。弁当や総菜、飲料など中高年向けのコンビニ・アイテムに加えて一般医薬品(大衆薬)を揃えている。7月に東京・江戸川区に1号店を出した。店名は「サンドラッグCVS」。シニア世帯の多い江戸川区で、10店舗程度出店する。油を使わずに調理できる器具を使い、店内でおかず類をつくる。既存のコンビニに行かない高齢者を呼び込むという。“中高年コンビニ”が成功すれば、次は食品スーパーの買収を狙うのではとの見方が強い。
ほかにも、大手ホームセンターのコメリやディスカウントストアも、地方の食品スーパーに興味を示している。
今後の動向が注目されているのは、ニチリウグループだ。ニチリウグループには、それぞれの地域で首位の有力地場スーパーが加盟している。たとえば山形県首位のヤマザワ(東証1部)、和歌山県首位のオークワ(同)、滋賀県首位の平和堂(同)、沖縄の流通最大手のサンエー(同)など、全国各地の有力17社で構成されている。
もう1つはシジシー(CGC)ジャパン。原信とナルスはCGCのメンバーで、これが縁で経営統合にまで進んだ。アークスはCGC本部(東京・新宿区)に駐在員を派遣。情報収集や調達先との直接交渉をする。CGCにはそれぞれの地域の個性的な店が多く加盟しており、加盟企業同士の経営統合が今後も実現するかもしれない。
いずれにしても地方のスーパーは中核都市に構える店だけが黒字で、ほかは赤字という構図だ。こうした“エース店舗”をイオンやヨーカ堂に攻められると、意外にもろい面がある。バランスシートを見ただけで企業体力を判定するのは難しいといわれており、再編・淘汰の流れは止めようがない。
●倒産相次ぐ、非上場の食品スーパー
1932年6月創業で、約80年の業歴を持つ東京・千代田区神田のスーパー冨士屋(店名はスーパーストア冨士屋)は、自己破産を申請する予定。宮崎市の食品スーパー・江南は7月31日、宮崎地裁から破産手続きの開始決定を受けた。負債は13年1月期末時点で12億100万円。神戸市の食品スーパー・三宅商会は7月22日、神戸地裁から破産手続きの開始決定を受けた。負債は5億9200万円強。
5月にはパワーズフジミ(新潟県、負債総額27億4000万円)、ファミリー両国(徳島県、11億6800万円)が経営破綻している(以上、帝国データバンク調べ)。
(文=編集部)