2回目となる今年は、6月17日にノミネート企業としてワタミフードサービス、ベネッセコーポレーション、東急ハンズなどの一般企業のほか、国立大学法人である東北大学なども含む計8社が発表され、3万票以上を集めた一般の人々からのウェブ投票などの結果を踏まえ今回、受賞企業が選定された。
受賞結果は以下のとおり。
<大賞>
ワタミフードサービス
(受賞理由)
2008年6月に正社員だった森美菜さん(当時26 歳)が、月141時間の残業を強いられ、わずか入社2カ月で過労自殺。昨年2月に労災認定されたあとも、同社は責任を認めることなく、創業者である渡邉美樹元会長は遺族からの求めに応じず、いまだに面談も謝罪も拒否している。遺族と支援する労働組合は、森さんの労働実態と原因の解明のために責任ある立場の人との面談を同社に求め続けているが、同社は顧問弁護士のみとの面談を除いて応じる姿勢を見せていない。
<特別賞>
東北大学
(受賞理由)
07年12月、東北大学薬学部助手の男性(当時24歳)が「新しい駒を探して下さい」との遺書を遺し、研究室から投身自殺した。同大大学院薬学研究科博士課程に在籍していた男性は07年6月、「人手不足」との理由で指導教授から請われ退学し、助手に就任。当初の話では学位取得のための研究を優先できるはずが、実験機材の修理や実習指導に忙殺され、自殺直前2カ月の時間外労働は104時間、97時間だった。
また07年10月からは指導教授の指示により、生殖機能異常などの副作用がある抗がん剤の実験に従事。排気も十分にできない環境で、ほぼ一人だけでの実験を強いられ、友人達に「もう子どもはできない」と漏らしていたという。このような環境にもかかわらず指導教授は、「仕事が遅い。他の子を採用すれば良かった」などと男性を叱責。自殺前にはうつ病を発症していたと見られている。12年3月に宮城県労働局が「業務上の心理的負荷が強い」として過労自殺と認定。
<教育的指導賞>
ベネッセコーポレーション
(受賞理由)
09年、人事を担当する人財部のなかに「人財部付」という部署が新設された。ここに配属された女性社員は、「あなたたちには問題があります。受け入れ先を獲得する活動をしなさい」と上司から指示された。電話に出ないように指示され、名刺も持たされなかった。自分を受け入れてくれる部署をさがす「社内就職活動」をしながら単純作業をするように命じられていた。12年8月、東京地裁立川支部判決は、人財部付が「実質的な退職勧奨の場となっていた疑いが強く、違法な制度」と判断し、この部署への異動も「人事権の裁量の範囲を逸脱したもの」として「無効」を言い渡している。
<業界賞>
クロスカンパニー
(受賞理由)
11年2月9日、立川労働基準監督署は、入社1年目の女性正社員(09年10月死亡)が極度の過労・ストレスにより死亡したとして労働災害として認定している。この女性社員は、大学を卒業した年である09年4月にクロスカンパニーに入社。同年9月に都内の店舗の店舗責任者(店長)に任命された。店長就任以来、日々の販売のほかに、シフト・販売促進プランの入力、レイアウト変更、メールによる売り上げ日報・報告書の作成、本社のある岡山での会議出席などに追われた。
受賞式内ではこのほかにも、大手企業の間で広がる「追い出し部屋」(リストラ部屋)の実態や、年賀はがきやかもめーるの大量販売ノルマのため、社員が自腹でそれらを購入し、金券ショップで換金する「自爆営業」が蔓延する日本郵政の実態なども披露された。
なお「ブラック企業大賞企画委員会」は、今回受賞した各企業の今後の改善に向けた取り組み状況などについて、引き続きフォローしていくとしている。
【「ブラック企業大賞 2013」ノミネート企業】
ワタミフードサービス
クロスカンパニー
ベネッセコーポレーション
サン・チャレンジ(ステーキのくいしんぼ)
王将フードサービス(餃子の王将)
西濃運輸
東急ハンズ
東北大学
(文=編集部)