ブラック企業は、なぜ私にとって理想的環境だった?優良企業でもつらそうに働く人も
そういえば、まだこの会社を取り上げていなかった。質問掲示板サイト「QIXIL」において「新田さんが働いていたブラック企業は?」とご質問頂きながら、当該サイト上では社名を明かしていなかった筆者の古巣であり、新卒で入社した会社である。
グッドウィルという名前の会社はもう存在しない。さまざまな経緯があり、同社は2008年7月31日に廃業した。09年6月23日に事業再生ADR手続受理、同年10月29日に東京証券取引所上場廃止、そして12月31日に解散している。
しかし、実質的な事業そのものは、商号を変更しながら現在も継続している。現オフィスは六本木ヒルズ。社名は創業時から以下のように変化した。
グッドウィル→グッドウィル・グループ→ラディアホールディングス→アドバンテージ・リソーシング・ジャパン→プロンプトホールディングス→テクノプロ・ホールディングス
ちなみに13年版の「ブラック企業ランキング」では、旧社名の「アドバンテージ・リソーシング・ジャパン」名義で、堂々の偏差値「75」に位置している。これは「ブラック企業の代名詞」、モンテローザやワタミ、光通信などと同ランクという輝かしいポジションである。
●ブラック企業と呼ばれる理由
さて、同社の何がそこまでブラックと認知されているのか。恐らく、次のような点からであろう。
・ハードワークで低賃金
繁忙期は朝6時から夜中2時くらいまでの勤務。帰宅できないのでオフィスで寝袋生活をしながら、残業代やもろもろの手当は存在せず。
・グレーな「給与天引」問題
会社のメイン事業はいわゆる「日雇い派遣」であったが、派遣スタッフへの給与から「データ装備費」という名目で不明瞭な天引きを行っており、後に社会問題に発展。業界全体としては慣行的だったが、同社が大手であったことから批判の的になった。
・「二重派遣」問題
派遣労働者が、派遣先からさらに別の企業に派遣される「二重派遣」は、職業安定法や労働基準法で禁止されている違法行為。同社はこの事件発覚で逮捕者を出し、法人としても書類送検され、罰金刑を命じられた(これにより、会社の事業許可が取り消されることがほぼ確実となったため、08年にすべての事業が廃止となった)。
ハードワークの割に低賃金で、明らかな違法行為を行っていたわけであるから、筆者の基準から考えてもブラック企業だと言える。
しかし、会社の筆者に対する扱いや待遇、労働環境などについて不満を持っているか? と問われれば、筆者は明らかにNOと言う。劣悪な環境であったかもしれないし、労働時間の割には低賃金だったかもしれないが、筆者は同社で得たいことが得られた。不満を感じるどころか、筆者を育ててくれた会社として大いに感謝し、満足しているのだ。