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ブラック企業は、なぜ私にとって理想的環境だった?優良企業でもつらそうに働く人も

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●自分の求めているものは得られたという満足感

 筆者が1999年に新卒第一期として入社した当時、同社は急成長しており、創業4年目にして株式上場を成し遂げようかというタイミングであった。実際に上場し、短期間で業界トップ企業になり、最盛期には全国で1100もの営業拠点を展開していた。

 同社の経営理念は「弛まぬベンチャースピリット」であり、社員に対しては自律的かつスピード感のある成長を要求していた。そして、ハードワークにはわかりやすく「昇進」と「お金」で報いようとする会社であった。

 実際、入社から半年程度で支店長を任されるような例は多くあり、各支店のアルバイトスタッフにも社員顔負けの「デキるビジネスパーソン」が散在していた。支店長の上位である「統括部長」クラスになると、管轄している各支店の営業利益に準じたボーナスを得ることができ、そのボーナスだけで年間1000万円超の金額を得る人もいた。もちろん学歴や入社年次などはまったく関係なく、成果を残す人間が出世していった。野心あるビジネスパーソンには理想的な環境であったと言えよう。

 もともと筆者は「将来起業する。そのためには短期間で重責を任されて成長できる環境がいい」という決意で就活をしており、同社の環境は希望に合致していた。実際、入社早々に事業企画部門に配属され、組織図的にも物理的にも経営陣に近い立場で、多くの貴重な経験をさせてもらうことができた。

 繁忙期には1日20時間労働はザラで、週休もロクにとれず、残業代は給料込みで、初任給は17万円くらいであったが、筆者にとっては個別の労働条件よりも「価値観との合致」が大きなモチベーション保持要素であったため、なんら不満はなかった。職位と給与は連動しており、3カ月に1度見直しが入る。お陰で筆者は入社後ずっと昇給することができ、2年目にはその基本給が倍になっていた。

 恐らくそのような思いは、覚悟を決めて同社に入った他の社員も同様であったはずだ。目前の仕事のキツさに、たまにグチを言う者もいたが、皆会社のミッションやビジョンを理解しており、高く遠い目標を共有して努力を惜しまなかった。その土台としては先述の「フェア」な評価や、着実に会社自体が成長しているという達成感もあったことだろう。確かに設定される目標は厳しい水準のものだったが達成できていたし(あれだけのハードワークを全員でやれば、それは達成するはずだ……)、カリスマ会長・折口雅博氏が約束した売り上げ規模や新サービスなどはすべて言葉通りに実現していくので、信頼と昂揚感があったことと思われる。

●ハードな労働環境で成長でき、起業に生かせた

 ハードな日々であったが、筆者が現在目標通り起業でき、やりがいを感じられる仕事をし、ハッピーな人生を送れているのも、世間からブラック企業と呼ばれた同社での経験のお陰だと感謝している。

 世間から「ブラック」と呼ばれる会社でハッピーに働いている人がいる。一方で、世間から「大手」「優良」「人気」「難関」「一流」と呼ばれる会社にいるのに、つらそうにしている人がいる。

 筆者自身、これまで延べ2万人以上の方々と面談する中で、両方のパターンを目の当たりにしてきた。

 筆者は単にブラックとされる企業を叩いて喜んでいるのではなく、後者のような「不幸なミスマッチ」を撲滅するために、「ブラック企業」という切り口から「キャリアデザイン」を語っているのだ。

「誰にとってもいい会社」はないし、「誰にとってもブラックな会社」も存在しない。同じ会社で同じ仕事をしていても、ある人は「最高に楽しい」と言い、ある人は「もう辞めたい…」と言う。それを「いい」とか「よくない」と感じる、自分自身の「価値観」次第なのだ。

 ぜひ、「自分にとって『いい会社』とは何か?」「自分にとっての『いい仕事』とは何か?」と考えていただきたい。

 筆者は「ブラック企業」というキーワードから、そのキッカケを提供したいと考えている。
(文=新田 龍/ブラック企業アナリスト、ヴィベアータ代表取締役)

※本稿は、新田龍氏のメルマガ「ブログには書けない、大企業のブラックな実態」から抜粋したコンテンツです。

【筆者プロフィール】

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新田 龍:ブラック企業アナリスト 株式会社ヴィベアータ代表取締役
「ブラック企業ランキング」ワースト企業で事業企画、コンサルタント、新卒採用担当を歴任。日本で唯一の「ブラック企業の専門家」として、TVや各種メディアでのコメンテーター、講演、執筆実績多数。著書に『伝説の就活』・『逆転内定』シリーズ、『人生を無駄にしない会社の選び方』『ブラック企業を見抜く技術・抜け出す技術』『就活の鉄則!』など。ビジスパにて、メルマガ「ブログには書けない、大企業のブラックな実態」を配信中。
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BusinessJournal編集部

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