ただし、新型クラウンベースの個人タクシーが都内を走っているのはよく見かけるようになっている。パトカーは設定しないのかもしれないが、クラウンにおいてはタクシー(JPNタクシーがあるため個人タクシーのニーズがメインになりそうだが)やハイヤー、社有車などへのフリート販売は切り離すことはできない。そのあたりのバランス調整(オーナードライバーズカーとハイヤーなど営業車との立ち位置の違い)は、ロイヤルサルーンとアスリートという2本柱がなくなったなかでは、かなり舵取りが難しいようにも見える。
国内の販売体制を見直すトヨタの戦略
クラウンだけでなく、近く登場予定の新型「カローラセダン」およびステーションワゴンの3ナンバー化など、トヨタは自社の車種ラインナップにおいて大きな変化を見せようとしていることを強く感じる。
これは、同時に進めている国内の販売体制見直しとリンクして考えるとわかりやすいかもしれない。東京では試験的ともいっていいが、メーカーと資本関係のある直資系ディーラー4系列(トヨタ、トヨペット、カローラ、ネッツ)が4月から統合される。つまり、トヨタディーラーが一本化され、どこでもすべてのトヨタ車が買えるようになる。
こうなると、たとえば長い間トヨタ店が行ってきた伝統的なクラウンの販売手法(代々乗り継ぐユーザーへの代替え促進と、それらのユーザーからの新規のお客の紹介)だけでは、どこでも扱えるようになっても、そのメリットともいえる販売実績アップはなかなか望めないだろう。都内の場合は今までもクラウンはトヨタ店とトヨペット店で併売してきたが、元カローラ店や元ネッツ店でもクラウンがしっかり販売できる体制、つまりカウンターセールス(ディーラーのショールームで販売する)に対応できる販売施策の充実が必要と考えたのかもしれない。それが前述した、目に見える積極的なセールスプロモーションと見ることもできる。
現状で新型クラウンの販売状況は「よく売れているが、決して絶好調とはいえない」といった表現が似合うかもしれない。セールスマンの日々の営業活動により、お客に“買ってもらっている”というケースも決して少なくはないだろう。新型クラウンの積極的な販促施策が販売状況の苦戦傾向を受けたものなのか、国内販売体制の見直しも見据えた新たな取り組みなのかは、もう少し様子を見ないとはっきりしないので、さらにウォッチしていきたいと考えている。
(文=小林敦志/フリー編集記者)