トヨタ自動車の新型「クラウン」は2018年6月26日に発売された。日本自動車販売協会連合会(自販連)の統計によると、初めて新型クラウンの販売台数がフルカウントされた18年7月から19年1月までの累計販売台数は4万2640台となり、月販平均台数は約6091台となる。新型クラウンの月販目標台数は4500台なので、統計だけを見ると好調どころか、セダン全体の人気が不振ということを考えれば大ヒットに近い数字となっている。
しかし、同じ自販連統計で最新となる19年2月の販売台数を見ると3802台となり、新型発売以降初めて月販目標台数を下回った。トヨタのウェブサイトにあるクラウンの納期めどはグレードを問わず“1カ月以内”なので、生産の都合で納車が滞ったということもない。
2月は3月と共に本格的な年度末決算セール期間となり、近年では、より確実に実績を確保するために2月に軸足を置いて年度末決算セールを進めるのが一般的となっている。そのなかでクラウンが2月に月販目標台数を下回ったのは、実に興味深いところ。3月は年度末決算セールの締め月となるので、さすがに月販目標台数である4500台をオーバーするものと予測できるが、4月以降の販売台数推移が俄然興味深いものとなってきた。
ちょうど2月に入った頃、首都圏在住の業界事情通から「クラウンを取り扱っているディーラーで自分のクルマのメンテナンスを行っているのですが、そこからクラウンに関するダイレクトメールが届きました」との話を聞いた。さらに聞くと、「封を開けると、そこには20万円を軽く超える特別値引きと、低金利ローンキャンペーンなどのクラウン購入に関する『スペシャルオファー』の案内が入っていました」というのだ。
早速、当該ディーラーのサイトを見ると、さすがに“20万円を軽く超える特別値引き”はなかったものの、金利が1.9%となる残価設定ローンの紹介だけでなく、購入時と3年後の全2回払いとなるローン(金利1.1%)も紹介されていた。そして、いずれかのローンを利用すると約16万円相当の計4点の用品がプレゼントされることが掲載されていた。
1.9%(通常は3.9%)の低金利残価設定ローンについては、メーカーであるトヨタのサイトでも掲載されていた。“新型クラウン50000台受注記念”とし、19年1~3月の期間限定で全国展開されているキャンペーンとなっていた。年度末決算セールも意識したスペシャルオファーともいえるが、それでも今までのクラウンでは、ここまで踏み込んだものはほとんど見かけることはなかった。
筆者が新型クラウンデビュー以来の動きを見ていて印象的に感じたのは、当初からクラウンにしてはかなり積極的な販促キャンペーンを行っているということだ。クラウンというクルマは初代デビュー以来60年を超え、今もラインナップされ続けている、まさに日本を代表する高級セダン。今まではセールスマンが代々乗っているお客のところへ行って「間もなく新型が出ますよ」と話せば、「最上級グレードにオプション全部つけて持ってこい」という流れも珍しくないほど、特に新型デビュー直後は歴代クラウンオーナーの代替えで一定台数の受注を確保できていた。そのため目立った販促活動は行ってこなかっただけに、今回の動きは余計に目立っている。