ルネサスが隠す、異例の2カ月工場停止の“不都合な理由”…経営危機下で巨額買収の暴挙
このなかで、SoCが赤字を垂れ流す元凶であった。四半期毎の売上高で2010年に約800億円あった売上は、2013年には半分の約400億円に減少している。
一方、ルネサスの大きな収益源であるマイコンは、2014年以降は「自動車向け半導体」とセグメント名を変え、四半期毎の売上高では、約800億円から約1000億円へとビジネスを拡大させている。
また、2013年まではアナログ&パワーおよびSoCと分類していた半導体は、2014年以降は「汎用向け半導体」に統合された。そして、汎用の中のSoCをさらに縮小することにより、2014年第1四半期に約1200億円あった売上は、2016年には800億円前後にまで減少させた。
さらに、2017年第2四半期以降は、汎用向け半導体を「産業向け」と「ブロードベース向け」に分けた。この内の産業向け半導体は、2017年第4四半期に約600億円の売上高を記録したが、その後、減少し、2018年第3四半期には約420億円になった。
確かにメディアが報じているとおり、産業向け半導体は約最大600億円から約420億円に減少している。しかし、この程度の売上高の減少で、国内外の13工場が操業停止になるとは考えられない。
過剰在庫の影響
2016に発生した熊本地震で、ルネサスの熊本工場は大きな損害を被った。それを契機にルネサスは、大震災が起きた時でもビジネスに影響が出ないように、常に多めに在庫を確保しておくことにした。要するに、ルネサスは事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan )を強化したわけだが、それが過剰在庫を持つ原因となり、ルネサスの財務を圧迫しているのではないかと、多くのメディアは報じている。
ルネサスの「2018年12月期 第4四半期・通期プレゼンテーション」資料には、ルネサスの在庫状況が示されている(図3)。それによれば、ルネサスは四半期ベースで仕掛品と完成品の合計で、最大約1500億円の在庫を抱えていることがわかる。
確かにこの規模の在庫は、ルネサスの財務に悪影響があるかもしれない。その証拠に、前掲資料には2017年の第1四半期に90%を超えていたルネサスの主要工場の稼働率が、2018年の第4四半期に60%程度まで低下したことが示されている(図4)。
しかしわからないのは、ルネサスの売上高は熊本大地震直後の2016年第3四半期に若干悪化したが、すぐに回復しており、その後も安定している(図5)。さらに、営業利益率も会計基準を変更した影響で2017年第2四半期に4.8%まで低下しているが、それを除けば概ね10%以上をキープしているのである。したがって、過剰在庫を一掃するために工場の稼働率を低下させたことが、今回のルネサスの窮地を招いたとは思えないのである。