無節操な方針転換
じつはファンドは昨年7月に再び名称変更をしている。チャイナトラベル1号は「Blockshine」に、チャイナトラベル2号は「Block King」にといった具合だ。そして両ファンドは別の不振上場企業の大株主に登場しているのである。
Blockshineは昨年7月に東証2部の通信販売会社パス(旧イー・キャッシュ)の株式約22%を同じく投資会社Oakキャピタルから約10億円で取得。さらにBlock Kingは同年12月に同じく不動産会社アルデプロの増資(5億円)と新株予約権(最大行使額は20億円)を引き受けている。
パスとアルデプロで共通するのは同時に仮想通貨関連の新規事業をぶち上げている点だ。オーストラリアのベンチャーと提携してはやりのビジネスを新たな収益柱にしようとの絵図が描かれ、その点、ルーデンHDにおける中国絡みの話と同様、ファンドの名称とはじつにマッチしていた。おかげでパスの株価も急上昇。150円を割り込む水準から一時は400円近くまで駆け上がった。
この間、ルーデンHDもあれだけ喧伝した中国関連ビジネスを脇に置いて昨年5月以降、仮想通貨ビジネスへと無節操な方針転換を実行している。こちらも株価はそれなりの好反応を示していた。
もっとも、パス株についていうと、ファンドは取得株を売り抜けるタイミングを逸した可能性が高い。第2四半期報告書によると、昨年9月末の時点でファンド保有株には1株も動きがない。アルデプロに至っては株価がほとんど反応を見せず、こちらも今年1月末時点で増資株に変動は見られない。
有力仕手筋の存在
一連の動きの裏にいるのは誰なのか。
筆者の手元に「5/3打ち合わせアジェンダ」なる1枚紙がある。日付は昨年5月1日。作成したのは後にパスの取締役に就任するPwC税理士法人の赤坂惠司氏とみられる。その日はルーデンHDとパスの仮想通貨事業参入などについて話し合いが持たれたようだ。並べられた項目を見ると、業務提携内容や今後の体制案など核心部分に関する説明者として「○○さん」と2人の名字が記されている。
関係者によると、それら説明者のうち1人が有力仕手筋なのだという。関西出身で今年54歳になるその人物は1990年代に外資系銀行のファンドマネジャーに師事したとされ、98年頃に上京。東証マザーズ上場第1号のリキッドオーディオ・ジャパンの実質オーナーとも接点を持った。
仕手筋として注目されるようになったのは2000年代前半のベンチャーバブルの頃で、とみに知られているのは07年に摘発されたビーマップ株の相場操縦事件で重要な役割を演じていたことだ。相場操縦の主犯格はパチンコ攻略情報会社のオーナーだったが、それを指南していたのが件の仕手筋だった。ビーマップ事件後は12年春に起きた小僧寿しをめぐる経営権異動の裏で動いていたことが一部で注目を集めた。
果たしてルーデンHD株売り抜けの真相はいかに。直近でファンドの連絡先となっている弁護士に未提出の理由などを尋ねると、「ご指摘ありがとうございます」などと間の抜けた弁明が返ってきた。もっとも、数カ月前にも同じ問い合わせをしているが、一向に是正される気配はない。ルールに則って自らが情報を開示しようとしないなら、しかるべき公権力が行使されるのを待つしかなさそうだ。
(文=高橋篤史/ジャーナリスト)