ビジネスジャーナル > 企業ニュース > あの上場企業の増資株はどこに消えた  > 2ページ目
NEW
高橋篤史「経済禁忌録」

あの上場企業の大量発行増資株は、どこに消えたのか?蠢く“中国系”ファンドと有力仕手筋

文=高橋篤史/ジャーナリスト

 ところがその裏で件のファンドは不透明な動きを見せていた。まずは増資直後の昨年2月9日、組合員の洪昊JAPANで代表を務めていた中国人が取締役を解任され、後任には都内の日本人男性が就任した。また、1号ファンドについてはその後に洪昊JAPAN以外の組合員が加わった。ルーデンHDの増資と同時に愛知県内の繊維関連企業で代表取締役を務めるシンガポール在住の男性が加わり、さらに2月下旬には都内の医療法人で理事長を務める男性が加わっている。

 じつのところ、ファンドのもともとの名称は「レンジャー」といい、増資計画公表前の一昨年11月中旬にチャイナトラベルへと名称変更されていたにすぎなかった。中国関連の新規事業計画をそれらしく見せるためだろう。その後の組合員加入も踏まえると、バックが中国マネーという触れ込みは怪しい。

 そして冒頭で述べたように、ファンドは引き受けた増資株の大半をルール無視で売り抜けていたのである。

 ルーデンHD株についてファンドの組合員である洪昊JAPANが関東財務局に対し大量保有報告書を最後に提出したのは、増資から2週間後の昨年2月9日。その時の記載によると、1号ファンドは引き受けた約101万株のうち15万株を代物弁済を理由に処分した以外は保有を継続、2号ファンドは約101万株分の新株予約権をそのまま保有しているとされた。

 ところが、その後に会社側が提出した第2四半期報告書によると、昨年6月末の時点で1号ファンドの名前は上位10位内の大株主から消えているのである。第10位株主の保有数は35万株だから、この時点で1号ファンドは少なくとも66万株以上を売り抜けていた計算になる。かわりに2号ファンドが約52万株を保有する第5位株主として記載されていた。本来なら1号ファンドの売却も、2号ファンドの新株予約権行使も、大量保有報告書(変更報告書)が提出されていなければならない。

 さらに半年経った昨年12月末時点ではどうか。有価証券報告書によると、10位内の大株主からは2号ファンドの名前も消えている。大量保有報告書が提出されていないため、新株予約権の行使状況も株式の処分状況も詳細がわからないが、第10位株主と比較すると、半年の間でさらに少なくとも27万株以上を売り抜けている計算になる。

 おそらくファンドは新株予約権の行使分も含めて割り当てられた約200万株の大半を売り抜けてしまったのではないだろうか。というのもその後、ファンドは掛け金をつり上げ次なる投資に注ぎ込んでいるからだ。

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

あの上場企業の大量発行増資株は、どこに消えたのか?蠢く“中国系”ファンドと有力仕手筋のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!