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折りたたみスマホ、サムスンは不具合多発で発売延期だが、日本勢は開発する余力すらなし

取材・文=A4studio
折りたたみスマホ、サムスンは不具合多発で発売延期だが、日本勢は開発する余力すらなしの画像1Galaxy Fold(「サムスン HP」より)

 日々トレンドが移り変わるモバイル端末市場で、新たな技術を導入したスマートフォン(スマホ)が話題を呼んでいる。それが端末を二つ折りにできる折りたたみ式スマホの“フォルダブルスマホ”だ。

 今年2月末にスペインで開催されたモバイル業界最大のイベント「MWC 19 Barcelona」にて、韓国サムスンや中国ファーウェイなど多くの有名メーカーが、このフォルダブルスマホを発表してから3カ月。サムスンの「ギャラクシーフォールド」は折りたたむ部分の画面に不具合の報告が多発したためアメリカでの発売が延期されたが、ファーウェイの「Mate X」は7月に発売予定となっており、業界関係者やガジェットファンから熱い視線が送られている。

 このフォルダブルスマホはどんなところが革新的なのか。ケータイジャーナリストの石野純也氏に解説してもらった。

約29万円という価格帯が普及のネック

「折りたたみスマホ自体は、NTTドコモの2画面スマホ『M』シリーズなど以前からありましたが、かつての端末は2枚のディスプレイをつなぎ合わせただけだったので、折り目のヒンジ部分には映像が表示できませんでした。ですが、ギャラクシーフォールドなどの新たなフォルダブルスマホはディスプレイに有機ELを採用しており、ディスプレイそのものを曲げられるという革新的なもの。ガジェットファンも、この未来っぽい、SF感がある新技術にインパクトを感じて食いついている印象ですね」(石野氏)

 さらに、ファーウェイのMate Xは、開けば8インチの正方形に近いディスプレイサイズとなるなど、今までのスマホよりも数まわり画面が大きくなるのも特徴。電車内など移動中に動画を見る人が多くなった今、ひとつの端末でスマホとタブレットの両方として使えるのが一般層からすると大きな魅力といえる。

 ただし、問題なのはその価格。現時点での予定価格は、ギャラクシーフォールドが1980ドル(約22万円)、Mate Xにいたっては2299ユーロ(約29万円)と、お世辞にもお手頃とはいいがたい。これでは一般層向けというよりは富裕層の道楽ツールで終わってしまうことも十分考えられる。

「確かに今の価格帯では、かなりのガジェット好きでも手を出しづらいのは事実。ですが、新しい技術というのは時間とともに安くなっていくもの。折りたたみの技術は特殊ですし、一般的なスマートフォン並みに値段が安くなるのには相当時間がかかるものの、量産体制が整いさえすれば10数万円のハイエンドスマホくらいには価格が落ちることも考えられる。それなら米アップルのiPhoneの新作とそう変わりませんし、その価格帯で売ることができれば今後のモバイル市場のメインストリームになるでしょう」(石野氏)

国内メーカーは開発する余力なし

 ちなみに、有機ELで折りたたみ技術を搭載したスマホとしては、サムスンファーウェイに先駆けて、中国メーカーのRoyole(ロヨル)が「FlexPai」を昨年11月に発表、2月にアメリカで発売されるなどすでに市場に出回っている。

 石野氏によると、「FlexPaiは端末としての完成度が低く、開発者向けの試作機という意味合いが強いので現段階では全然普及していない」そうだが、これを含めてフォルダブルスマホを発表、発売を予定しているのは中国や韓国メーカーが中心だ。国内メーカーの開発事情はどうなっているのか。

「フォルダブルなど含め新技術を開発できるのは、たとえ売れなくてもメーカーとしての技術力を示せればいいと割り切れる、世界的シェアを持つメーカー。だから、サムスンやファーウェイが開発を先行するのは必然なのですが、一方、残念ながら今の日本にはそんな余力のあるメーカーはありません。ソニーも『エクスペリア』シリーズの販売台数が大幅に落ちていますし、その立て直しが最優先となっています。4月にソニーモバイルが21:9の新型縦長スマートフォンの『エクスペリア1』を発表しましたが、大画面端末というニーズに応えてはいるものの、折りたたみ技術を開発するほどの余裕はなかったということでしょう」(石野氏)

 同じく4月にシャープが国産有機ELを採用したフォルダブルスマホを報道関係者向けの展示会で発表したが、あくまでディスプレイの技術披露目的で商品化を検討しているわけではない。つまり、国産フォルダブルスマホが生まれるかどうかは、まずサムスンやファーウェイの端末が市場に受け入れられるかどうかの結果を待ってからになるのだろう。では、普及の鍵はいったいなんなのか。

アップルの参入と5Gが普及の鍵

「少し無理やりですが通信技術のLTEの例で考えてみると、LTEに対応する機種はアンドロイドのほうが早く発売されました。ですが、本格的にLTEが普及し始めたのはこれに対応するiPhoneが発売されて数世代経ってからのことでした。ということは、今回のフォルダブルスマホもiPhoneやiPadが追いかけてくれば普及の後押しとなるのではないでしょうか。もちろんギャラクシーフォールドなどがまったく売れなければ、そのままこの技術が消えてしまうことも考えられるのですが」(石野氏)

 注目のアップルは、今年3月にフォルダブルに関する特許を出願したことが明らかになっているため、近い将来参入することは大いにあり得るということだ。また、石野氏は普及のもうひとつのポイントに5G(第5世代移動通信システム)を挙げる。

「フォルダブルスマホを開いた状態の大きいディスプレイだと、通信速度が速くないと精細な映像を映せません。ですから5Gが普及しないことにはフォルダブルもはやらない。日本の場合、5Gは2020年からサービス開始なので、少なくともそこまではフォルダブルスマホが主流となることはないでしょう」(石野氏)

 今のところは高価格帯が最大のネックになっているが、買える人が買って徐々に価格が下がっていけば、多くのユーザーの心をつかむのはそう難しくないのかもしれない。これがスマホシーンのスタンダードになるかどうか。一般ユーザーはしばらく動向を見届けることになりそうだ。
(取材・文=A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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