スルガ銀行は、りそなホールディングス(HD)とも業務提携を軸に交渉していたが、りそなHDは不正融資の拡大というリスクを考慮し、提携を見送った。シェアハウス以外に1.8兆円ある不動産関連の貸付債権の毀損度をどう見るかなど、受け皿候補となっている金融機関は慎重に審査せざるを得なかったということだ。
これまでの取材で明らかになったことがある。スルガ銀行は、りそな銀行と埼玉りそな銀行を傘下に持つ、りそなHDと最優先に交渉を続けてきた。だが、りそなHDは結局、火中の栗を拾わなかった。
一方、みずほ銀行を傘下に持つ、みずほフィフィナンシャルグループも、受け皿の有力候補と取り沙汰されたこともあって、「金融庁が非公式に、みずほに(引き受けを)打診した」(有力地銀の頭取)との情報が駆け巡った時期もあったが、これも幻となった。
銀行に20%以上出資する場合には、金融庁の認可が必要になる。
スルガ銀行の19年3月期決算は、971億円の純損失となった。前年の69億円の黒字から一転、17年ぶりの赤字となった。シェアハウス向け融資など貸し倒れに備えて2000億円超の引当金を積んだことが響いた。20年は105億円の黒字転換を見込むが、19年9月期(中間決算)の数字を見るまでは、達成できるか否か見通せない。
投資用不動産向け融資を5月下旬に再開するとしているが、不正行為を招いた営業ノルマを廃止し、審査体制を厳しくする。投資用不動産融資で地方銀行随一の高収益を誇ったスルガ銀行が、新しい事業モデルを見つけるのは容易ではない。
不適切融資は1兆円超
スルガ銀行は、総額1.8兆円の投資用不動産向け融資の洗い直しを進めてきた。その結果を5月15日に発表した。5537億円(7813件)分については、借入希望者の預金通帳の改竄といった明らかな不正行為が見つかった。計75人の行員が不正の指示や不正の黙認に関与していた、と認定した。
調査の対象となったのは、シェアハウスや中古のマンション(1棟売りを含む)など約3万8000件。改竄や偽造など「不正の疑い」がある融資も864億円(1575件)判明した。
このほか、借り手が用意すべき自己資金(物件購入額の1割)を不動産業者が立て替え、自己資金を偽装したと疑われる案件が4300億円(4000件。資料改竄分との重複を除く)に達した。
これら3つの不正を合計すると、総額1兆700億円(計1万3000件超)となり、同行の総融資残高2.9兆円の3割超となった。有國社長は「これだけの件数の不正が検出されたことは、誠に申し訳ない」と陳謝したが、厳しいノルマや創業家におもねる行内の雰囲気やパワハラの横行が無謀な融資拡大に突っ走った原因と指摘されている。
スルガ銀行は銀行法で禁じられている無担保ローンの抱き合わせ販売が1372件あったことも、合わせて公表した。
(文=編集部)