東京都は2月14日、1月21日~2月13日までの24日間に新型コロナウイルス対策の営業時間短縮要請に応じた飲食店に支払う協力金の申請の受け付けを始めた。1店舗当たり中小事業者は60万~480万円、大企業は最大480万円を支給する。受付期間は3月25日まで。2月14日以降の協力金は、まん延防止等重点措置の延長期間終了後に申請を受け付けるとしている。
時短協力金頼みの構図が鮮明に
上場外食企業の「時短協力金」依存が鮮明になった。時短協力金を営業外収益や特別利益として計上。本業では営業赤字が続くものの、時短協力金の押し上げ効果で黒字を確保するという構図だ。
業界最大手のゼンショーホールディングスは22年3月期連結決算の売上高と営業利益を下方修正したが、時短協力金の寄与で純利益は前期比6.2倍の141億円となる。当初の想定から49億円上振れする。21年4~12月期に緊急事態宣言下の時短協力金215億円を特別利益に計上したことが最終増益の原動力となった。
売上高は前期比12%増の6644億円を見込む。従来予想(16%増の6880億円)を236億円下回る。営業利益は6%増の128億円を予定。同97億円下方修正した。牛丼の「すき家」や100円寿司の「はま寿司」、海外での持ち帰り寿司は堅調だが、「ココス」や「ビッグボーイ」などレストラン業態の回復が鈍い。
カフェレストラン「ガスト」や中華レストラン「バーミヤン」を運営する、すかいらーくホールディングスの21年12月期の連結最終損益(国際会計基準)は87億円の黒字(20年12月期は172億円の赤字)だった。21年9月末まで東京都などで緊急事態宣言が続き、時短営業や酒類制限による店内飲食の落ち込みで売り上げは減少したものの、400億円超の時短協力金が威力を発揮し、最終黒字へと転換を果たした。
売上高に当たる売上収益は前期比8%減の2645億円、営業損益は182億円の黒字(20年12月期は230億円の赤字)だった。続く22年12月期の業績予想は、21年同期に多額の時短協力金を上乗せした反動もあって、純利益は54%減の40億円と大幅な減益を見込んでいる。
ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」のロイヤルホールディングスの21年12月期の連結最終損益は29億円の赤字(20年12月期は275億円の赤字)となった。従来予想(50億円の赤字)から21億円赤字幅が縮小した。時短協力金や企業の休業手当を支援する雇用調整助成金の「助成金収入」(合計54億円)を営業外収益に加え、これが最終損益の改善につながった。売上高は前期比微減の840億円、営業損益段階では74億円の赤字(20年12月期は192億円の赤字)と連続赤字を余儀なくされた。
「いきなり!ステーキ」のペッパーフードサービスの21年12月期の連結営業損益は14億円の赤字と2期連続の赤字だった。一方、時短協力金25億円を営業外収益としたことで、最終損益は3億円の黒字(20年12月期は39億円の赤字)に転換した。
牛丼「吉野家」の吉野家ホールディングスも21年4~11月期に時短協力金と雇用調整助成金の合計93億円を、営業外の助成金収入とした結果、最終損益は61億円の黒字(20年同期は54億円の赤字)。
ショッピングセンター内でフードコートを展開するクリエイト・レストランツ・ホールディングスの22年2月期の最終損益は65億円の黒字(21年2月期は155億円の赤字)に転換する。雇用調整助成金と時短協力金(合計31億円)を営業外収益とする効果がフルに出る。
上場外食企業の多くは営業損益段階では赤字なのに、時短協力金などの協力金が決算のカンフル剤となり、最終黒字に化けた。協力金がなければ、大きな最終赤字に陥っている企業は少なくない。協力金が“ふいご”の役割を果たし、財務の悪化を防いでいる。
東京都や大阪府など全国のほとんどの地域で新型コロナ「まん延防止等重点措置」が適用された。今回も協力金が支給されるため、業績の押し上げ効果は続くが、「実績からみて協力金が多過ぎるところもある。声が大きい経営者だけが勝つシステムの改善が必要だ」(非上場の中堅外食企業のトップ)といった冷めた声もある。例えば、売り上げが2000億円台後半で協力金が400億円超だったとすると。対売り上げに占める比率は15%になる。
反面教師の企業も
イタリア料理店「カフェ ラ・ボエム」が主力のグローバルダイニングの長谷川耕造社長は、東京都の営業時間短縮や酒類提供の自粛要請に、まったく従わず通常営業を続行した。
21年12月期の連結決算は売上高が前期比69%増の95億円、純利益は10億円の黒字(20年12月期は15億円の赤字)にV字回復した。商業施設内の店舗は施設側の営業時間に合わせざるを得なかったため、時短協力金を2億円、営業外収益として計上したが、同社が最終黒字に転換したのは、「お上の要請を蹴ったため」(外食大手の首脳)だ。
「判官びいきの利用客がグローバルダイニングの店を利用した。初めての利用客も増えたといわれており、相乗効果が出た。長谷川社長は『自分の店を守るための自衛手段として店舗の営業を継続する』との判断を下し、それを支持する顧客がいたという事実は重い」(上場外食企業の若手役員)。
また、普段はほとんど利益が出ていない店が、時短協力金によって大きな利益を得たという声も聞かれる。小規模な店のオーナー経営者が月々180万円の支給を受けた事例も散見された。行政の最終責任者である知事や市長は、外食店が全て店を閉めて、ある時間以降、街の灯が消えたほうが、威令が行き届いたと感じられるのかもしれない。時短協力金など協力金制度に歪みがあるとの指摘もある。
(文=Business Journal編集部)