日本民間放送連盟研究所(民放連研究所)は21日、「テレビの広告効果に関する研究」第2回調査結果を公表した。
日本アドバタイザーズ協会テレビ・ラジオメディア委員会を通じて募集した3社の広告主の5商品(アルコール商品2種、食品、飲料、耐久財)について、広告キャンペーンの効果測定を実施。「テレビ広告とYouTube動画広告の両方を用いたキャンペーンについて、両者の到達(リーチ)から購買に至る各プロセスでの効果と効率などを測定し、比較した」という。
リーチ、広告認知効率、購買率ともにテレビCMが優位
調査報告書によるとまず「広告のリーチ」に関しては、「テレビCMのリーチは平均して80%近くあるが、YouTube動画広告のリーチはテレビとの重複分を含めても4%程度で、YouTube単独では1%程度」としている。
「広告の認知効率と購買率について」は「テレビCMは、YouTube動画広告よりも 2.1 倍広告が認知されやすい。テレビCMとYouTube動画広告の両方がリーチすることで広告認知効率はさらに高まる」「テレビCMはYouTube動画広告よりも1.8倍商品の購買につながりやすい。テレビCMとYouTube動画広告の両方がリーチすることで商品の購買率はさらに高まる」と分析した。
テレビCMは「購買意志決定」、動画広告「検討過程」に影響
一方で、民放連研究所は「テレビCMは<認知><興味関心><購買意思決定>のプロセスへの寄与の大きさに特徴があるが、インターネット動画広告は、ネット媒体やSNSでの情報検索・比較などの<検討プロセス>のきっかけや行動喚起に役割の中心がある」と述べ、それぞれの“役割”の違いも指摘している。
また実際のテレビCM(タイムCMとスポットCMが混在)、YouTube動画広告別の出稿金額をもとに、購買プロセスの接触から購買に至る各プロセスでの 1 人当たりCM単価も試算している。
「広告リーチにおける単価」はテレビCM2.4円、YouTube動画広告が5.2円。「広告認知」でテレビCM5.6 円、YouTube動画広告は25.8円。「購買」でテレビCM 75.8 円、YouTube動画広告は308.7円だったという。
同研究所は「特に商品認知以降のプロセスでは、テレビ CM は YouTube 動画広告の 4 分の 1 以下の単価水準になっており、コスト効率では 4 倍以上高いと言える」と評価した。
調査はインターネット調査方式で実施された。スクリーニング調査(SC調査)、本調査ともに2021年11月に商品1~3、22年1月に商品4~5についてそれぞれ実施した。ログ集計は、テレビCM接触ログを電通STADIA、YouTube動画広告接触ログをGoogle Ads Data Hubをそれぞれ用い、調査回答者のIDから判定し、マッチングを実施したという。サンプル数は以下の通りだったという。
① 11月調査:SC 調査 46221ss 本調査 [商品1] 400ss [商品2] 400ss [商品3] 400ss
② 1月調査:SC 調査 46174ss 本調査 [商品4] 800ss [商品5] 400ss
民放連研究所は2019 年度から、電通、ビデオリサーチの協力のもと「テレビの広告効果に関する研究」を実施。2020 年8月に第1回調査の結果を発表していた。
ネット系大手広告代理店関係者は一連の民放連調査研究所の結果に関し、次のように感想を述べた。
「第一印象として民放連さんとしてはテレビCMへの出稿のテコ入れを図りたいのだろうな、とは思いました。
ネット広告全盛といわれる世論の中ですが、テレビCMが依然として影響力を持っているのは確かです。ただ、今回の調査報告書でもあるように、どのような目的で広告を出すのか、媒体によって得手不得手があるのは昔から変わらないとも思います。そもそもテレビ、ネット双方を組み合わせて打つのが現在のキャンペーンの主流ですからね」
YouTube広告とテレビCMはまだまだトレードオフの関係ではないようだ。
(文=Business Journal編集部)