気温の急な低下を受けて“ユニクロの「ヒートテック」を買わなければ”という声がSNS上で相次ぐなか、実は「ヒートテック極暖」や「フリース」など一部の秋冬商品が大幅に値上げされていることに気が付いた人から、悲鳴の声が多数あがっているようだ。
先週までとは打って変わって、今週に入り全国的に一気に気温が低下し冷え込んでいる。関東地区では先週までは残暑の影響で「ぽかぽか陽気」が続いていたが、寒冷前線が日本列島を通過し、5日の東京都心では11時30分の気温が昨日より7.6℃も低い20.9℃を記録。北日本や北陸、山陰など日本海側では前日より10℃以上も低いエリアが出るなど、一気に秋が深まっている。
そんななか、冬の定番衣類、ユニクロの「ヒートテック」を着始めるべきかどうかがSNS上で話題に。6日にはTwitter上で「ヒートテック」というキーワードがトレンド入りを果たし、以下のような声があがっている。
<「寒いけど今ヒートテック着たら冬越せない」「暑いけど今タンクトップ来たら真夏耐えられない」って20代まで思ってたけど、経験を積んで分かった。「寒いなら着た方がいいし、暑いなら逆に長袖着る選択肢もある」だから私は今日からヒートテック>(原文ママ、以下同)
<寒いのでヒートテックでも着ようかと思いましたが、今から着ていたら冬はいったい何を着れば…>
<寒いの無理すぎてヒートテック着たし冬物コート出した>
<一気に冷え込みました ヒートテックはいらないだろうと思ってたら今日は必要でした>
<今まで何着もヒートテック買ってきたのに何故か手元には2〜3着しか無い>
<低温×雨のコラボでヒートテック必要なほどの体感温度>
なかには<そろそろヒートテックを新調する時期かもしれません…>といった、購入を検討しているという声もみられるが、以下のように「値上げ」に言及するツイートも。
<ヒートテック値上げなの?>
<前のは廃棄したんで買い直し。ヒートテック値上げしてますね>
<ユニクロの「ヒートテック」「フリース」の定番商品が値上げ発表してたのを忘れてる人多すぎ>
<ヒートテックも1000円位上がる…定番のフリースジャケットとか、2021年モデルの方が安いから、来年再来年用とまとめて大きめ買っといた>
<そういえばヒートテック1000円値上げしたんだっけ?今年からは買わないかもな>
<値上げは正直きついけど、今年もヒートテックの極暖は買い込む>
「価格を維持するために品質を犠牲にするという選択はありませんでした」
実はユニクロは8月から販売した秋冬向け一部商品を大幅に値上げしている。「ヒートテック極暖」は1500円から1990円へ(約1.3倍)、「ヒートテック超極暖」は1900円から2990円へ値上げ(約1.6倍)。これ以外でも、「フリース」は1990円から2990円へ(約1.5倍)、「ウルトラライトダウンジャケット」は5990円から6990円へ(約1.2倍)値上げするなど、人気の定番商品の価格改定を実施。ユニクロはHP上で「フリース」の値上げについて次のように説明している。
「価格が上がる大きな要因は、製造コストの変化です。私たちは発売時から、中国を中心とした海外のパートナー工場様と一緒に工夫を重ね、価格を変えずに、毎年、素材やデザインを改良してきました。この間、生産や販売に関わる人件費は上昇を続け、その上、近年の急激な原料費や物流費の高騰に直面しました。あらゆるコストが上がる中、私たちには、価格を維持するために品質を犠牲にするという選択はありませんでした。ユニクロはお客様に長く愛される普段着を作る会社だからです。それが私たちのLifeWearであり、サステナビリティの考え方の基本です。『安かろう、悪かろう』では、ユニクロの服ではありません。今年のフリースフルジップジャケットは、素材に回収ペットボトルから作られた100%リサイクルポリエステルの身生地を使い、ファスナーなどの付属品もできる限りリサイクル素材を使用しています。また、昨年よりも生地の目付けを約50g/m2アップし、より快適な着心地を目指しました」
メリハリのある価格設定の背景
アパレル業界関係者はいう。
「ユニクロは一部商品を値上げする一方、超定番商品といえる通常版の『ヒートテック』(990円)や『ジーンズ』(3990円)などの価格は据え置き。値上げするアイテムは全品番数の約2割にとどめ、約8割の商品は価格を据え置くなど、メリハリのある価格設定を行っている。ユニクロは数年前に新商品を一律で平均10%も値上げして大きな客離れを起こしたことがあり、その教訓を生かし、低価格で販売数量が多い、消費者にとってエッセンシャルな商品の価格は上げないことで、顧客に寄り添う姿勢を見せている。
今回の値上げに際しては、9月に『ユニクロのフリースが2990円になる理由』と題する広告まで大々的に打って、その理由を丁寧に説明しているが、それだけ値上げの発表を受けて同社への問い合わせや反響が大きかったということだろう。消費者のコスト感覚にかなり敏感になっている様子がうかがえる」
そんなユニクロの商品だが、来年以降もさらに上昇する可能性があるという。
「テレビでも盛んに“値上げの秋”と銘打たれて、10月から値上げされる食品や飲料が6500品を超えることなどがニュースになっているが、世界的な原材料費や人件費、物流費の高騰はこの先数年は加速の一途をたどるとみられており、ユニクロ商品も来年以降もじわじわ値上げされる可能性は十分ある。ユニクロや同じくファーストリテイリング傘下のGUの商品は、その高クオリティさを勘案すれば今までが“安すぎた”ともいえる。今の物価上昇は一企業のコスト低減努力でどうこうできるレベルを超えており、特に低価格を売りにしていたユニクロのような企業は、徐々に原材料費の上昇分を価格に転嫁していく必要にかられる。
そう考えれば、ユニクロ商品のヘビーユーザーであれば、値上げしたから買い控えるというよりは、来年以降の再値上げを見越して今のうちに“買い溜め”しておいたほうが賢明かもしれない」(同)