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ガスト運営元、赤字拡大&大量閉店の裏で単価高めの新業態2つ同時オープンの狙い

取材・文=文月/A4studio、協力=重盛高雄/フードアナリスト
ガスト運営元、赤字拡大&大量閉店の裏で単価高めの新業態2つ同時オープンの狙いの画像1
ガストのHPより

ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」などの外食チェーンを手掛ける、すかいらーくホールディングス(HD)。ファミレス業界トップクラスの規模を誇る同社は、今年1~2月に新業態を2つもオープンさせた。ひとつは、1月18日に埼玉県白岡市にオープンした「そば」の業態である「八郎そば」。2017年6月オープンのハワイアンダイニングカフェ「La Ohana(ラ・オハナ)」以来の6年ぶりとなる新業態出店であり、自家製となる「生そば」のほか、丼もの、鉄板料理を提供するスタイルとなっている。

 そしてもうひとつは、2月1日に東京都町田市でオープンした飲茶スタイルの店である「桃菜」だ。中国茶を楽しみつつ点心などの料理に舌鼓を打ち、飲茶という異文化体験ができる店となっており、2089~2699円(税込)の価格帯で食べ放題メニューも提供している。将来的に南関東で20店舗の出店を計画し、全国展開も視野に入れているとのこと。

 コロナ禍における飲食店打撃の影響を完全に抜け切れていない状況のなかで、強気の攻勢とも受けとれる新業態オープン。すかいらーくHDは、2022年12月期最終損益が8月当初に想定していた20億円の赤字から63億7100万円の赤字にまで拡大し、業績低迷が目立つ。また、23年中に不採算店舗を100店も閉店させることが明らかになっており、街から、すかいらーくグループの店舗が消える可能性も示唆されているのだ。業績悪化するなかで、新業態をスタートさせる意図は何なのか。今回はフードジャーナリストの重盛高雄氏に聞いた。

新業態スタートの理由は業績不振か

 今回の新業態は、半ばテコ入れのようなかたちでスタートさせたと重盛氏は推測する。

「シンプルにいえば、これまでの店舗ラインナップでは、客単価アップが見込めないと、すかいらーくは判断したのでしょう。すかいらーくが運営するファミレスは、メニューの価格が競合の専門店ほど高くない代わりに、クオリティもチェーン店相応というものがほとんど。特にガストだと、飲食目的の顧客ももちろんいますが、仕事の打ち合わせや友達と談笑する場として利用している人が多い印象なので、客単価は下がってしまいます。

 また、コロナ禍の影響で赤字が続いていたことも売上アップが急務となった理由かと思われます。デリバリー、テイクアウトといった新たな購買チャンネルの戦略も功を奏さず、他のチェーンに比べ遅れを取ってしまっているのも赤字要因のひとつ。そこで、すかいらーくは、売上アップの一環としてグループの原点であるイートインに立ち返り、客単価が高めの新業態を起点として、新たな客層を掴もうと目論んでいるのかと思います」(重盛氏)

 では、新業態の内容についてはどう見るべきか。

「単価は高めですが、どちらもやはりカジュアルな印象です。八郎そばは、そばのほかに丼ものや鉄板焼きなどの豊富さで勝負し、桃菜も中国茶を揃えつつグランドメニューのほかに食べ放題を実施するなど意欲的な挑戦は見られます。本場の味、王道の味を楽しめるという店舗設計ではないものの、客単価を高めに設定して、売上アップを図ろうとする気概は感じられますし、シェア獲得にも前向きなようですね」(同)

 新業態以外にも、すかいらーくでは客数、客単価アップと思われる取り組みを行っている。たとえば、昨年12月下旬からネット上では、すかいらーくグループの店舗内にあるコンセントが一部封鎖されているという報告が相次いでいるのだ。こうした対応に「回転率を上げるため」と推察する声も上がっている。

「特にガストの場合ですと、ドリンクメニューと何か一品だけ頼めば席に居続けられる仕組みとなっているので、ピーク時にずっと席に居続けられてしまうと、回転率は上がりません。客単価をがんばって上げようとしている最近のすかいらーくの方針を見ていると、長時間滞在の一因となるコンセントを封鎖しようとする動きの意図は理解できます」(同)

経営体力があるからこそできる芸当

 新業態を2つも同時期に開始できるのは、すかいらーくならではの事情、戦略もあるという。

「すかいらーくはガストだけでも1317店舗、グループ総店舗数となると3054店舗(※2022年12月31日現在)にも上る国内最大級の外食チェーングループです。このような大規模な企業となると、経営体力もスケールメリットもありますし、異業態への挑戦も行いやすいです。そして大企業であればあるほど、求められる社会的責任も大きくなっていくので、業績をアップさせないといけないという使命感に駆られているという側面もあるでしょう」(同)

 すかいらーくは利益のためならば、損切りも早いという。

「たとえば『ステーキガスト』は、ステーキブランドで一定の知名度を得ているチェーン店ですが、ここ数年で一気に閉店ラッシュが続いています。シェア獲得が思うようにできなかったのか、コスト負担が思ったよりも大きいのか定かではありませんが、経営陣は売上アップが見込めないと判断して不採算店舗を撤退させているのだと考えられます。そして跡地に八郎そばや桃菜といった新業態を開店させ、新しい客層を獲得しようとしているわけです」(同)

 赤字が続く同社だが、業績を回復させるにはイメージ転換が必要だという。

「従来どおり低価格帯でカジュアルな入りやすい店舗をメインにしていくのか、もしくは価格を上げてクオリティの高い美味しい料理を出す店舗をメインにしていくのか、すかいらーくは分岐点にあるといえます。そこでやはり課題となるのが価格の設定でしょう。

 仮に後者のほうをすかいらーくが選んだときは、お客の目を引く新メニューの提供が必然となるので、開発にはしっかりと投資するべきでしょう。新業態の場合も然りです。たとえば八郎そばは生(なま)そばなどを売りにしていますが、うまく丼ものや鉄板焼きの目新しさ、美味しさでリピーターを増やせるかが肝になってくるでしょう。とりあえず目先の課題としては、トライ&エラーを重ねて客が求めているものを少しずつ模索していくほかないかと思います」(同)

 今後すかいらーくグループがどういった形態の店舗をメイン事業に据えていくのか、注目だ。

(取材・文=文月/A4studio、協力=重盛高雄/フードアナリスト)

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

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