●ヘッドハンターの育成
–そういったヘッドハンターは、どのようにして育成されるのでしょうか?
武元 ひとつには、場数です。あとは、センス。これは最初から持ったものがあります。
–例えば、御社に入社された方で、この人はヘッドハンターに向いている、向いていないといった適性を見分けられて、部署を割り振られているのですか?
武元 いえ、特に割り振っているのではなく、現在はグループのリーダーの下でOJTをしばらくやってもらって、そこで場数をこなして、センスも磨いてもらう。それで独り立ちできるようになれば、そこからスタートを切るのです。
–本書の中で、対象者にアプローチするときに、最初に直筆の手紙を送ると書かれていますが、皆さん、実際に手書きで書かれているのですか?
武元 これは案件ごとに違います。私の場合は、高度技能職の方を中心に動いていますが、すべて直筆の手紙を送っています。
–そのような手紙を送った場合、どのくらい反応があるのですか?
武元 これも幅がありますね。対象者が100名くらいいる場合は1~2割ですが、対象者が10名くらいだと、手紙を送るだけではなくて、人物像に至るまで十分に調査をして絞り込んでいますので、そうすると10名中7~8名に会える場合もあります。その辺は対象者数と相関関係がありますね。
–ボリュームゾーンが40~50代とおっしゃっていましたが、40代以降の転職は増えているのですか?
武元 増えていますね。むしろ我々の案件というのが40代以上ですので、依頼が増加傾向にあるということは、すなわち40代以降の転職が増えていることになります。
●ヘッドハンティング候補者のどこを見ているのか
–ヘッドハンターの方々が相当対象者を細かく調べると書かれていますが、実際に個人のことを調べるというのは、かなり制限が多く、難しいのではないでしょうか?
武元 我々は情報を個人情報と評価情報とに分けていて、個人情報は制限・規制がありますから、ここに最初に踏み込むことはしません。我々が細かく調べるのは評価情報、要は評判です。例えば、該当者の周囲における関係者から、あの人はどういう人なのですかというような、仕事に対する取り組み姿勢であったり、ポリシーを可能な範囲で聞いていく。ただし、どうしても情報が入らないという場合もあります。
時には技術的な分野で技術力を買うので、人となりについては最重要課題ではないという話になれば、技術レベルについての情報、特許情報、学会、論文と、あらゆる視点から情報を集めます。中には、自ら情報を開示しているケースもありますね。今はFacebookなどのSNSで情報を得られることもありますし、役員クラスであれば法務局で法人登記から情報を得られることもあります。ありとあらゆる、合法的に得られる情報は得ていきます。あとは候補者と実際に接点を持ち、信頼関係を築けていけると、いろいろな情報が入ってきます。
–本書の中では、どのような人材がヘッドハンティングの対象から漏れていくのか、ということが細かく書かれていますが、ヘッドハンティングの対象になるかどうかというのは別としても、社会人として常に心がけておかなければいけないことが多く書かれているように思えました。そういうことは、執筆されるに当たって意識された部分もあるのでしょうか?
武元 ありますね。今、日本が直面しているのは変革の時期だと思うのです。これまでは保守的な社会だった。我々のヘッドハンティングの対象になる人物ということは、すなわち社会や企業が求めている人材。そこに合致していれば雇用の機会、あるいは転職の機会というものも増えていく。逆に言うと、機会増加は適材適所に配置できるチャンスでもあると思うのです。
そういう人材が増えることが、ひいては社会の活性化ということにつながっていくと思うので、「どういうことを我々ビジネスマンとして、常に意識して磨いていかなくてはいけないのか」その点をいくつか意図して挙げました。それが少しでも広がっていけばいいですね。きっかけはヘッドハンターに声を掛けてもらうためということでもいいのですが、でも結果としては、そういう意識の持ちようが、ヘッドハンティングや転職ではなく、社内における評価が高まっていくということにもつながるような、本質的な点だと思います。
『ヘッドハンターはあなたのどこを見ているのか』 上司との相性が悪い、派閥闘争に敗れた、部下に背かれた…そんなある日、あなたに毛筆の手紙が届く。「ぜひ会いたい」。ヘッドハンターが、ある企業の依頼を受けてあなたを推薦する候補者に選んだ