トレーニングジム大手のRIZAP(ライザップ)の広告がインターネット上で話題になっている。ライザップの広告といえば、だらしなくたるんだ体の著名人が、数カ月後に見事に引き締まった体に変身し、衝撃的なまでのビフォー・アフターの違いを見せつけ、「ライザップに入れば、ここまで変われる」という印象を強く与えるのが定番となっている。
そんななか、ある女性タレントが登場した2年前の広告が今、ネット上の一部で話題になっている。約2年間広告に使われていたことで、多くの方が目にしていたはずだが、今になって疑問を呈する声があがっているのだ。それは女性タレントのダイエットのビフォー・アフターを並べた広告写真なのだが、「加工しているのではないか」との声が出て物議を醸している。
確かに見比べてみると、ビフォーの写真では裸足だが、アフターの写真では10cm以上の高さがありそうなハイヒールを履いているものの、並んだ写真では身長が同じに調整されている。仮に写真に加工しているとすれば、フィットネスジムのような“見た目の美醜”を目的とする企業の広告としては不適切ではないか。実際はどうなのか、ライザップグループ広報部に直接見解を聞いた。
「該当の広告の写真は、一切加工していません。広告枠内などのサイズに収めるために、全体のバランスは変えずに、縦横比を固定したまま、画像のサイズ調整を行うことはある。モデルになった著名人の方や、お客様の大きな努力によって成しえた成果であって、それを加工と言われるのは大変残念です」(ライザップグループ広報)
そもそもライザップの事業は、2012年のトレーニングジムから始まり急成長した。テレビCMに芸能人や著名人を起用し、肉体改造のビフォー・アフターをセンセーショナルに見せて視聴者に強いインパクトを与え、「結果にコミットする」というキャッチフレーズも顧客獲得に寄与した。
ライザップの料金は、多くの人が選ぶ「シェイプアッププログラム」のコース料金(2カ月・1回50分×16回)が32万7800円と入会金が5万5000円かかるので、合計38万2800円。1回80分で4カ月のコースだと100万円を超える。高い費用がかかるが、必ず望んだ結果を出せるように指導する、という訴えが多くの潜在的顧客に届いたのだろう。トレーニングジムが乱立するなかに後発組ながら、急速に発展を遂げてきた。
その後、数多くの赤字企業を次々に買収し、元カルビー会長兼CEO(最高経営責任者)で“プロ経営者”の松本晃氏を招聘したものの、松本氏はおよそ半年で取締役を退任し、市場関係者からは「松本氏にも見放された」とささやかれ、一時は「経営危機」「倒産の大ピンチ」などと報じられた。
だが、収益性の見込めない会社の整理など地道に経営再建を進める一方で、気軽にトレーニングができる“コンビニジム”を標榜する「chocoZAP(ちょこざっぷ)」を展開し始めると、事業開始からわずか1年ほどで会員約80万人を獲得し、業界トップに上り詰める偉業を達成。今後の成長軌道に期待を抱かせる状況になった。
とはいえ、ちょこざっぷとライザップは別物。顧客層やニーズもまったく異なる。ちょこざっぷは「運動不足を解消したい」「鈍った体を動かしたい」というライトユーザー向け。一方のライザップは「がっつりボディメイクをしたい」「太った体をモデルのように引き締めたい」という、かなり負荷の強いトレーニングや食事制限なども含め、一念発起しなければ入会すること自体にハードルの高さを感じるジムだ。
そんなライザップの心理的ハードルを下げるための広告は、さまざまな演出方法を用いて「ライザップなら痩せられる」「理想の体を手に入れられる」という思いを抱かせるように訴えかけてくる。
ライザップの広告に登場する著名人たちは、たった数カ月のダイエットとは思えないほど激変するため、「本当にこんなに変わるのか」と疑念を持つ人が多いのかもしれないが、画像の加工を疑われるほど体形が激変したことが、疑惑物議の持ち上がった要因といえるのだろう。