東京都を地盤とする東京都民銀行と八千代銀行の経営統合発表に続く足利HDの再上場は、地銀再編の引き金になるとの見方が強い。再上場する足利HDが、他の金融機関と資本・業務提携を行うかどうかが注目点だ。
もともと、破綻した足利銀行の受け皿になるのは地銀連合といわれていた。横浜、千葉、群馬、常陽(水戸市)、山梨中央、八十二(長野市)、静岡、東邦(福島市)の地銀8行に日本生命保険など生損保6社などが加わり地銀連合が形成された。最終審査に地銀連合と野村グループが残った時には、野村グループは当て馬のように見られていたが土壇場で大逆転。野村グループが地銀連合を100億円上回る1,200億円の買収額を提示したことが決め手となった。
野村グループの狙いは、あくまでも再生ビジネス。再上場の際に持ち株の売り抜けを考えており、10年には日経平均株価が低迷していたため再上場を先送りした。地銀連合に加わった地銀は、足利銀行を諦めたわけではなかった。複数の金融機関が触手を伸ばしたが、株式の譲渡額で折り合いがつかず、足利銀行の争奪戦は再上場後に持ち越された。
早くも足利銀行獲得に動いているのは、地銀連合を主導した横浜銀行だ。横浜銀行は足利銀行が破綻した当時、頭取に元横浜銀行最高財務責任者の池田憲人氏を送り込んでいたため、地銀連合が買収していれば、池田氏がそのまま頭取を続投していた。
また、地銀連合に加わった千葉や常陽、静岡、八十二も、足利銀行獲得に興味を示している。この4行は東京三菱UFJ銀行の親密地銀のトップが集まる火曜会のメンバーだ。足利銀はもともと旧三菱銀行の親密地銀であり、共同オンラインシステムに参加を予定していたが国有化で中止になった。
そして大穴と目されているのが、あおぞら銀行である。7月に大株主の米投資会社のサーベラスが全株を放出して撤退し、経営の自由度が高まっており、地域金融機関との連携を強化したいと考えている。
銀行業界では、足利銀行の再上場で新たな地銀再編の引き金が引かれるとの見方も強まっている。
(文=編集部)
【補足】
足利HD上場は時価総額で13年3番目の大型案件だったが、公募価格を7.3%上回る451円で初値を形成。その後、476円まで上昇し、結局、432円で取引を終えた。12月19日の初日の出来高は6091万株で公募・売り出し株数(6325万株)の96%をこなした格好だ。地銀再編の思惑が底流にあるからだろうか。「大型案件としては(株価は)大健闘」(大手証券会社)との見方が多かった。