ディスカウントストア「ドン・キホーテ 梅田本店」を名乗る巧妙なクレジットカード詐欺が発生していることがわかった。同店舗の店員を名乗る人物から電話があり、電話を受けた人物の父親名義のクレカで中国人が支払いをしようとしており、不審に思い本人確認を行ったところ生年月日を言えなかったため、告げられた電話番号にかけたと言われたという。口車に乗って騙されるとクレカ情報に加え住所、電話番号、生年月日などが盗まれてしまうというが、具体的にどのような手口なのか、また、同様の詐欺事例は増えているのか。専門家の見解も交え追ってみたい。
SNS上に投稿された被害報告によれば、手口はこうだ。同店舗の店員を名乗る犯人は、個人情報が漏れて不正にカードをつくられている可能性もあるので念のため警察に連絡すると言って電話を切り、その後、改めてターゲットの人物に電話をかけて「警察から告げられた」という「消費生活センターの電話番号」に連絡するよう指示。この偽の電話番号は詐欺グループのもので、電話をかけると消費生活センターの担当者を装う犯人からクレカ情報や各種個人情報を聞かれ、盗まれてしまうというものだ。
実際に被害に遭ったある人は、その消費生活センターのものだという電話番号がIP電話を示す「050」で始まるものだったため念のため警察に相談したところ、詐欺であることが発覚して難を逃れたとX(旧Twitter)上で報告している。
電話を受けた人はドン・キホーテ店員が親切心からいろいろと対処してくれていると感じてしまい、また警察や消費生活センターの存在を示すなど幾重にも手が込んでいることから、SNS上では被害報告に対し以下のような反応が多数寄せられている。
<これ何も知らなければ自分も引っかかるような気がする>
<騙し方が一段階進んだ感じがします>
<「親切な店員さんだ」って少しでも思っちゃう人は詐欺に引っかかる危険高い>
<手口が巧妙すぎて、最近はもう何もかも疑わないと全てを持っていかれる気がして、疑うことから入るから疲れる>
ちなみにSNS上では、クレカを使おうとしているのが「中国人」ではなく「日本人女性」であったり、「ドン・キホーテ」ではなく「百貨店」を騙る手口もあるという報告がみられる。
巧妙化する特殊詐欺の手口
特殊詐欺の手口は巧妙化している。たとえばここ数年増加している「還付金詐欺」は、自治体職員を装う犯人が、過去に支払った医療費や保険料が戻ってくるという電話をかけ、ATMから現金を振り込ませるというもの。同じく自治体や税務署の職員などを名乗るものとしては、医療費などの払い戻しがあるのでキャッシュカードの確認の必要があると言い自宅を訪問し、カードを詐取する「預貯金詐欺」も多発。警察官や銀行協会職員を名乗る犯人が「キャッシュカードが不正利用されているので確認に行く」と言って自宅を訪問し、嘘の手続きを説明してカードをすり替えて盗むという「キャッシュカード詐欺盗」も多い。
このほか、事業者を名乗る犯人からスマホのショートメッセージ(SMS)やメールなどで「未納料金が発生している」などとメッセージが送られてくるという経験をしたことがある人も少なくないだろう。記載された電話番号に電話をかけると「払わなければ裁判になる」と言われ、お金を支払ってしまうというものだが、犯人が法務省や裁判所の名義ではがきなどを郵送し、嘘の料金を支払わせようとする詐欺も多い。
特殊詐欺の件数、被害額は増加傾向にある。警察庁の発表によれば、昨年(2022年)の特殊詐欺の認知件数は前年比21.2%増の1万7570件、被害額は同31.5%増の370.8億円となっている。被害者には65歳以上の高齢者が多く、法人被害を除いた総認知件数に占める割合は86.6%にも上る。
「ネット上で募集している割高な時給のアルバイトに応募したところ、実は特殊詐欺の『かけ子』や『受け子』だったというケースも珍しくない。募集内容を見ても詐欺行為のサポート役だとわからないものもあり、若者が気が付くと犯罪の共犯者になってしまうというのは恐ろしい」(全国紙記者)
電話でお金の話を持ち出されたら詐欺だと考える
今回のように小売店などを名乗る手口の詐欺は今、増えているのか。防犯アドバイザーの京師美佳氏はいう。
「昔からある劇場型の特殊詐欺の一種で、フィッシング詐欺の電話版ともいえます。警察官を装って『捜査のため』という名目で暗証番号を含めたカード情報を盗むケースもあります。最近では詐欺グループが都道府県ごとに『かけ子』を雇って方言を使って電話をかけさせる手口も増えており、これまで被害が少なかった地方の県でも被害が増加しています。また、ここ数年増加しているものとしてはスミッシング詐欺があげられます。アマゾンをはじめとするEC事業者などを騙って個人の携帯電話にSNSを送り、『カードが悪用されている恐れがある』『今すぐ未払い料金を支払わないとカードを凍結する』などと脅し偽のHPにアクセスさせ情報を盗むというものです」
このような詐欺の被害に遭わないためには、どのようなことを心がけるべきか。
「今回のように事業者を名乗るものに加え、役所や銀行協会、弁護士などさまざまな組織、職業を名乗る手口が存在し、新たな手口が日々生まれているので、高齢者を中心に被害が減っていないのが実情です。相手が役所だろうが警察だろうが、知らない相手から電話がかかってきてお金の話を持ち出されたら、すべて詐欺だと思うことが重要です。いったん電話を切って、家族や知人、または警察相談専用電話の『#9110』や消費者ホットラインの『188』に相談してください。これらの行政窓口は詐欺被害の情報を豊富に把握しているので、すぐに詐欺であることを指摘してくれます」(同)
(文=Business Journal編集部、協力=京師美佳/防犯アドバイザー)