店内に流れる「ドン、ドン、ドン、ドンキ~♪」という謎のテーマ曲、地方のマイルドヤンキー層をターゲットにしたかのようなテイストの雑多かつ大量の品揃え、商品をフロアに所狭しと積み上げた名物の圧縮陳列……。
大型の総合スーパーマーケットが軒並み業績不振に陥るなかで、“驚安の殿堂”として知られるディスカウントストア「ドン・キホーテ」が好調だ。2016年6月期連結の売上高は約7600億円、国内のグループ総店舗数は約340。最近では、プライベートブランド(PB)の50V型4Kテレビを格安で販売して大ヒットさせている。
ドンキは現在、新業態として「MEGAドン・キホーテ」を各地で展開している。これは、ファミリー層をメインターゲットに食品や日用雑貨品などの生活必需品を強化した「生活密着型」の業態だ。
5月には、東京・渋谷に「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」をオープンした。同店は、「ドン・キホーテ渋谷店」を閉店してリニューアルするかたちで開店、場所も元の店舗とほど近い立地だ。都心エリア最大級の売り場面積を武器に、目標年商100億円を掲げている。同店が注目を浴びているのは、渋谷に誕生した大型店というだけではなく、「進化型旗艦店」をうたっているからだ。
いったい、渋谷のMEGAドンキのどんな点が「進化型」なのか。7月中旬の週末、実際に訪れてみた。
5階の「TENGA SHOP」で大騒ぎ
MEGAドンキ渋谷本店は、JR渋谷駅のスクランブル交差点を渡った先の旧センター街の奥、東急百貨店本店の近くにある。ここは、かつて「マルハンパチンコタワー渋谷」や「クラブセガ渋谷店」が出店していたビルの跡地だ。
フロア構成は地下1階~地上6階の7フロア。売り場面積は5522平方m。面積的には、リニューアル前の約3倍に拡大しており、まさに旗艦店にふさわしい規模だ。
しかし、店内に入ってフロアを見て回っても、このMEGAドンキのどこが「進化型」なのか、今いちよくわからない。
1階にはデカデカとポップが掲げられた「東京おみやげコーナー」があり、ハチ公やモヤイ像など、渋谷の色が濃い菓子類が平積みされ、その裏にあるのは北海道、大阪、広島、博多、沖縄といった地方のおみやげ品だ。同じフロアには、化粧品や香水も販売されていた。
この品揃えでわかるのは、「インバウンド(訪日外国人観光客)需要を取り込みたい」という思惑だ。実際、おみやげや化粧品のコーナーには、中国人らしき団体客や欧米人の若いカップルたちが群がっていた。とはいえ、こうした光景はほかのドンキ店舗でもよく見られる。そもそも、外国人観光客をターゲットにするのは今や普通であり、それだけでは「進化型」とはいえない。
2階から6階も見て回ったが、やはり印象は変わらない。2階は食料品やアルコール類や菓子類、3階は医療薬品や日用消耗品、ペット用品、4階はブランド品や衣料品、アウトドア用品、5階は清掃用品や大工用品などのほか、ドンキで馴染みのパーティーグッズ、6階は電化製品や美容家電、インテリア……。従来のドンキよりも通路がやや広くなっているものの、圧縮陳列やにぎやかなポップは健在で、品揃えや店内の雰囲気もほとんど同じだ。