ほかのドンキと違いがあるとすれば、5階のパーティーグッズ売り場の一角にアダルトグッズ「TENGA」の特設コーナー「TENGA SHOP」があることだろう。ここでは、TENGAの各製品はもちろん、女性向けアダルトグッズの「iroha」、さらに「LOVE ME TENGA」のロゴがあしらわれたTシャツやトートバッグなどのグッズも販売されている。
この日も、アダルトグッズ売り場らしからぬポップな雰囲気のなか、若いカップルや外国人客が大騒ぎでTENGAを物色していた。しかしながら、「TENGA SHOP」はドンキ初というわけではなく、都内では秋葉原店にオープンしているため、やはり「ほかのドンキとどこが違うの?」という疑問は拭えない。
総合スーパー化するドンキ…生鮮食品が充実
ただ、地下1階に足を運ぶと、「進化型」の意味を少しだけ理解することができた。
このフロアは食品売り場で、なかでも青果、精肉、鮮魚の生鮮食品はフルラインで販売されている。高級肉売り場の一部には対面販売が取り入れられ、どちらかといえば大手スーパーのような雰囲気だ。
フロアの照明には暖色が配されており、商品の陳列も従来のドンキとは明らかに異なる。また、おそらく試験的なものだろうが、西友などが導入するセミセルフレジが設置されているのも興味深い。
なぜ、ドンキがこれほど生鮮食品売り場に力を入れたのか。それは東京都心部特有ともいえる事情に起因する。
1990年代後半、バブル期の地価高騰などの影響により、東京都心部では人口が減少した。住民が少なくなれば、当然ながらスーパーの需要も減っていく。しかし、2000年代後半頃から都心回帰が始まり、近年は都心部の人口が急増。それに伴い、渋谷ではスーパーが少ないことが大きな問題となっていたのだ。そもそも、これまで渋谷や新宿などの都心部にMEGAドンキ渋谷本店のような大規模な“総合スーパー”は存在しなかった。
つまり、従来の地域密着型ディスカウントストアから都市型の総合スーパーへと業態を移行させた点が「進化」というわけだ。実際、ドンキは最近、日本全国で閉店した大型スーパーの跡地に出店し、総合スーパー化を進めている。
オールジェンダートイレの利用客はゼロ
生鮮食品の充実ぶりには納得したが、実際に店舗を訪れて感じたのは、「やはり従来のドンキとたいして変わらない」ということだ。確かに生鮮食品を買っていく客は多かったが、今のところ、利用客がこのMEGAドンキを“進化型の総合スーパー”と認識している様子は見当たらない。