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もうコンビニで惣菜を買えない…惣菜工場、不衛生かつ劣悪な労働環境の実態

文=Business Journal編集部
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「gettyimages」より

 毎日のように口にする人も多いコンビニエンスストアの弁当・総菜。その製造工場の不衛生かつ劣悪な環境をレポートした記事が一部で話題を呼んでいた。2023年10月19日付「キャリコネニュース」記事『コンビニで冷やし中華やうどんは買わなくなりました」コンビニ工場を3日で辞めた女性の回想』は、コンビニの製麺工場に勤務した経験のある女性の証言を紹介。白い色がグレーに汚れて悪臭を放つ靴を渡され、少しでも作業が遅れるとリーダーと思われるフィリピン系女性に罵倒されたり、勤務終了時間になっても次のシフトの人が現れなかったため社員を探そうと持ち場を離れると罵倒されたりしたという。私たちになじみの深いコンビニ惣菜の製造工場とは、どのような実態なのか。専門家の見解を交え追ってみたい。

 セブン-イレブンやローソン、ファミリーマートをはじめコンビニチェーンでは毎日のように弁当・総菜の新商品が投入されているが、その製造現場がどのようになっているのかは、あまり知られていない。

「各社は自社製品の弁当や総菜については、本部で商品企画を行い何度も試作・試食を繰り返し、全国販売の前には一部地域で限定的に販売してセールス動向をリサーチし、合格した商品だけが全国の店舗の店頭に並ぶことになる。製造自体は外部のメーカーに委託しているのが大半で、味や量、さらに見た目が一律になっているか本部が厳格にチェックしている。委託先のメーカーといっても、昨今では有名ブランドをいくつも抱える大手メーカーも多く、品質は向上している」(コンビニ業界関係者)

 原材料価格やエネルギーコスト、人件費の高騰を受け、コンビニ惣菜の価格も上昇している。たとえば「鮭おにぎり」の価格をみてみると、セブンは189円(税込み/地域によって異なる/以下同)、ファミマは180円、ローソンは167円。「ミックスサンド」はセブンは302円(税込み、以下同)、ファミマは298円、ローソンは297円。鮭おにぎり1個120~130円ほどが相場だった時代に慣れている人にとっては「高くなった」と感じるかもしれない。

「コンビニの自社惣菜に限っていえば、価格上昇の原因は製造現場の人件費以外の部分が大きい。本部は製造コストを抑えるために委託先への発注金額をできるだけ抑えている。結果的に工場では外国人労働者の比率が高まっている。アルバイト、パート作業員の時給も他の業種と比べて高くはない」(同)

当たり前は、実は当たり前ではない

 そんなコンビニ惣菜の製造工場のなかには、作業員が厳しい環境下で働かされているケースもあるようだ。前出「キャリコネニュース」記事によれば、製麺工場に働いていた女性は外国人作業員だらけのなか、「冷やし中華の具を、流れてくる入れ物に入れる作業」の間、日本人の男性社員やリーダーと思われるフィリピン系女性から「きゅうりのやつは誰だ?」「汚い!なにやってんだ!」などと罵倒。休憩なしで7時間半も働かされ、終業時刻になっても代わりの人が来ず、社員を探すために持ち場を離れたところ『うどんの女何やってんだ!戻れ!』と罵倒されたという。ちなみにこの女性は記事内で「コンビニで冷やし中華やうどんは買わなくなりました」とコメントしている。

 このような劣悪な労働環境下で働かされているケースは多いのか。前出と別のコンビニ業界関係者はいう。

「ないともあるとも言い切れません。記事のような内容ほど酷いか否かは不明ですが、程度の差はあれ、厳しい環境下であることは事実だと思います」

 コンビニの総菜工場の労働環境の実態はどのようになっているのか。

「ほとんどのコンビニの場合、直接チェーン本部会社が惣菜工場や弁当工場を経営・運営している例は少なく、外部委託しているケースが大半であろうと思われます。ですので、チェーン本部から見ればブラックボックスとなっており、労働環境や職場環境にまで言及(目線)が行き届いていない可能性はかなりあります。

 コンビニで売られている商品は、ほぼ全ての商品の『商品規格(サイズ、重量、トッピングの量など)』は極めて厳格に決められており、具材の盛り付けなども『見本通り』になっていることが強く求められます。スーパーの店頭で売られている惣菜など自家製造のものが多ければ、大した問題にはなりにくいです。一方、コンビニで売られている商材は、商品にばらつきがあるとクレームになる可能性が高くなります。そのため、コンビニチェーンの本部としては、各製造元の会社(工場)に対して厳格な規格の順守を求めることになります。

 惣菜や弁当などのように、具材の形やサイズが大きく異なることが当たり前の商品づくりにおいて、これらの規格を厳格に守るためには、機械化・自動化は困難であり、特に最終的な仕上げ(トッピング、盛り付け、成型など)については必ず多くの人手が必要となります。本部側としては、規格の厳守さえできているのであれば、惣菜工場や弁当工場などがどのような労働・就労の環境となっていようとも口出しをしない。一方、工場側とすれば、チェーン本部から『規格を守れ』と言われれば、それを遵守するために全力を注ぐことになるでしょう。

 同一のコンビニチェーンでは、いつ買っても、どの店で買っても、いつも同じものが買えるという『安心感』『期待感』が消費者にはあります。これは裏を返せば、いついかなる時にでも、厳格に規格を守って製造している工場があり、そこで働く人々の不断の努力と労苦によって支えられているということです。『当たり前に買っている商品。誰がどんな状況でつくっているのか』という点について、ほんの少しでも考えを巡らせてもらえればと思います。目の前にある当たり前は、実は当たり前ではないということです。惣菜工場や弁当工場で働きたいという日本人が激減している現状において、多くの海外からの労働者(外国人技能実習生など)の労苦によって、日本人の『当たり前の消費』が支えられているという現実があるのです」(同)

発注者責任の重要性

 2014年、マルハニチロホールディングスのグループ会社アクリフーズの工場で、工場従業員の契約男性(事件当時49歳)が冷凍食品に農薬「マラチオン」を混入させるという事件が発生。冷凍食品640万個が回収され、2800人以上が健康被害を訴えるなど大きな被害が生じたが、男性が犯行に至った背景には、家族手当など各種手当の廃止やボーナスの減額、査定への不満などがあったとされる。

「職場環境や待遇に不満を持った人が、その職場や顧客に被害が及ぶことを目的に犯行に至るというケースは少なくない。特に食品工場の場合は人の健康・生命に直接影響してくる。劣悪な環境を放置することはコンビニ本部にとっても最悪の結果を招きかねないため、PB商品については発注者責任に基づき一定の関与を果たすことが必要では」(小売業界関係者)

(文=Business Journal編集部)

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