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半額の恵方巻きが大量売れ残り、200万本超が廃棄か…割高でも売れる商品

文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト
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「gettyimages」より

 節分の日にあたる2月3日夜、スーパーやコンビニエンスストアなどで半額に値下げされた「恵方巻き」が棚に大量に陳列されているという報告がSNS上で相次いだ。1日付け毎日新聞ウェブ版記事によれば、23年の節分シーズンの全国での恵方巻きの売れ残りは200万本以上と推計されるといい、同程度の量の廃棄処分が発生しているとみられる。恵方巻きをめぐては毎年、大量廃棄による食品ロスの問題がクローズアップされるが、なぜ流通各社は大量廃棄や値下げ販売が生じても大量に販売するのか。業界関係者の見解を交え追ってみたい。

 七福神にちなんで7種の具材を巻く恵方巻きは、江戸~明治時代に大阪の商人が商売繁盛を祈る習慣として始まったとされる(諸説あり)。全国的に商品として販売されるきっかけとなったのは、1998年にコンビニチェーン「セブン-イレブン」が全国で販売を開始したことだといわれている。セブン&アイ・ホールディングスは2017年1月掲載の当サイト記事の取材に対し次のように明かしていた。

「広島県の店舗のオーナーさんが、節分に太巻きを食べるという関西の風習に目につけ、89年に広島県の一部店舗から販売を開始しました。翌年から、順次販売エリアを拡大し、98年に全国で販売を開始しました」

 2010年代に入ると節分シーズンに小売店で恵方巻きを取り扱う動きが広がり、元来の7種の具材を巻く形態ではない多種多彩な商品やスイーツが登場。販売競争が過熱する一方で売れ残りによる大量廃棄が問題視され、事態を重く見た農林水産省が19年1月に日本スーパーマーケット協会や日本フランチャイズチェーン協会に対し、需要に見合った販売をして廃棄量を削減するよう呼びかける事態に発展。現在、農水省は恵方巻きの食品ロス削減に取り組む事業者を募集し、予約販売等に取り組む事業者を公表している。

「農水省の呼びかけに加えて食品ロス削減推進法の施行もあった19年以降、社会的な批判の強まりも受けて各社の間で『つくり過ぎ』を防ぐ意識が広まったため、廃棄量は年々、減少トレンドになっている」(コンビニ業界関係者)

平均価格は948円

 小売店に並ぶ恵方巻きの価格は安くない。帝国データバンクの発表によれば、今年の一般的な恵方巻きの平均価格は948円(税込み)で、高級志向の海鮮恵方巻きは1729円。たとえばイオンで販売されていた一般的な恵方巻きは税込みで1本1400~1900円台。

・海鮮七福巻(1922円)
・海鮮五福巻(1490円)
・海鮮サラダ巻(同)
・サスティナブル巻(同)
・ごちそうサーモン巻(同)

 また、セブン-イレブンの予約販売の商品は1000~1200円台(ミニサイズのものは除く)となっている。

・銀座久兵衛監修恵方巻(1296円)
・柿安監修和牛すき煮恵方巻(1026円)

 そんななか、3日夜にはSNS上では、スーパーなどで半額に値下げされた恵方巻きが大量に売れ残っているという写真や動画付きの報告が相次いだ。

<完全発注ミスか見込大違いかってほど 黒くて長くてぶっといのが半額以下で 超大量に売れ残っていた>(原文ママ、以下同)

<こんなに作らないで欲しい>

<恵方巻き全く売れなくて半額になってる>

<半額でも、誰も買わないってよ、恵方巻き 食品ロス、SDGSだの、言われているのに、まだやるの?>

<半額でもこんなに残るんか……の前に作りすぎ>

<半額の恵方巻きが山ほど余ってるのを見ると切ないもんがある>

割高でも売れる恵方巻き

 なぜ小売店側はこうした問題がありながらも恵方巻きの販売をやめないのか。流通ジャーナリストの西川立一氏はいう。

「小売企業各社は需要予測システムを活用するなど、できるだけ販売量を予測して廃棄が生じないよう努力しているが、それでも値下げ販売や廃棄は生じる。また、恵方巻の販売は店舗にとっては重要な『イベント』でもあり、来店客に購買を促すためには大量に陳列してインパクトを与える必要があり、一定の廃棄が出たとしても利益が出る限りは大量に陳列するということになる。

 同様の話は恵方巻に限ったことではなく、例えば店内調理のお惣菜は夕方から夜にかけて売れるので、夕方頃にたくさんつくって棚に陳列する。そうすると売れ残りが生じるが、かといって陳列しておかないと販売機会ロスが生じるので、トータルで利益が出るなら多めにつくって陳列するということになる。もっとも、以前と比べれば廃棄処分の量は格段に減ったのは事実」 

 小売り企業関係者はいう。

「一言でいえば『割高でも売れる』ということに尽きる。薄々気が付いているお客さんも少なくないと思うが、特に節分の日当日は恵方巻きを販売する代わりに、日常的に販売している割安な巻き寿司を取り扱っていなかったり、大幅に陳列する量を減らしてるケースが多い。恵方巻きの価格は通常の巻き寿司の2~3倍ほどするが、1本あたりのボリュームは大きくなるものの、中の具材は通常の巻き寿司で使用しているものと大きく変わるわけではなく、酢飯と海苔は同じ。さらに大手流通企業は大量仕入れで仕入れ価格を安く抑えることができるので、商品単体での利益率は高くなる。わざわざ恵方巻きを買うという目的でスーパーに行く人はそれほど多くはないが、やはり日本人にとって恵方巻きは目に入るとつい食べたくなる料理なので、スーパーで見かけると少し高くても買ってしまう。大きめのスーパーだと1日だけで千本単位で売れるので、仮につくったうちの1~2割が値下げや廃棄処分となっても十分に利益は出る」

 それでも近年では小売業界のなかで食品ロスを減らそうという動きは広まりつつあるという。

「食品ロス削減がここまで社会的な問題と認識されれば、特に大手の小売企業は企業の社会的責任という観点から廃棄処分削減に取り組まざるを得ない。また、ここ数年は原材料価格の高騰もあり、より厳格に需要予測を行って極力仕入れコストを抑制しなければならないという事情もある。ただ、惣菜や生鮮食品の品ぞろえの豊富さというのは、スーパーの集客を大きく左右する要素なので、欠品が目立つという状態は好ましくないし、販売機会の損失にもつながる。都市部で駅周辺に複数のスーパーがあるケースだと、会社帰りの人がどのスーパーに行くのかを選ぶ際に『あそこは惣菜や生鮮食品の品ぞろえが悪いから別の店にしよう』という行動になる。なので、店側としては夜遅い時間でも商品を多めに棚に出しておく必要に迫られ、結果として廃棄の量が増えてしまうということもある」

(文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト)

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役

流通ジャーナリスト。マーケティングプランナー。慶応義塾大学卒業。大手スーパー西友に勤務後、独立し、販促、広報、マーケティング業務を手掛ける。流通専門紙誌やビジネス誌に執筆。流通・サービスを中心に、取材、講演活動を続け、テレビ、ラジオのニュースや情報番組に解説者として出演している。

Twitter:@nishikawaryu

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