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富士山の麓で朝5時半から罵声…「地獄の特訓」の実態、12泊36万円の効果

文=Business Journal編集部
富士山の麓で朝5時半から罵声…「地獄の特訓」の実態、12泊36万円の効果の画像1
「gettyimages」より

 富士山の麓にある施設で行われる「地獄の特訓」と呼ばれる社員研修が、改めて今、注目されている。管理者養成学校が運営する山奥の合宿所でスマートフォンやテレビ、インターネットから隔離された環境で、朝5時30分から夜まで、ひたすら精神と肉体を鍛える訓練を続けるというもので、多くの企業が社員研修として社員を派遣している。たとえば「管理者養成基礎コース」は12泊13日で費用は36万5200円と安くはなく、ビジネスパーソン、管理職として必要な強いメンタルを獲得できるとの定評がある一方、「今の時代には合わない」といった声も聞かれる。果たして、どのような内容なのか。そして、今のビジネス環境を考慮した場合に効果が高いといえるのか。体験者や企業関係者の見解を交え追ってみたい。

 1979年に開校した管理者養成学校は、40年以上の歴史を持ち、修了生は30万人近くに上るという。同校が提供するコースは以下の6つ。

・管理者養成基礎コース
・上級訓練
・特設社長コース
・指導力開発訓練
・セールス特訓
・フレッシュマン颯爽研修

 なかでも最も参加者が多い管理者養成基礎コースは最大8人のグループで進められ、管理職として必要な論理的思考力や問題解決能力、指導力、統率力などを身につける。カリキュラムは、以下のようになっている(以下、公式サイトより)。

・40の質問
 自分の考えを短時間で掘り下げて、自分の考えや意図が正しく相手に伝わるように表現力を強化する。

・行動力基本動作
 行動力あふれるビジネススパーソンに共通する「10カ条」とは何かを考え、暗記することで、それを日常の習慣にできるようにする。

・共感論争・行動力論争
 職場に起こる小さな出来事について、どう考え、行動すべきか。自分の考えを論理的に話して相手を説得、共感を勝ち得る訓練。

・40キロ夜間行進訓練
 班単位で40キロを行進する。出発にあたって班員1人1人に役割が与えられ、行進中はそれを全うし、バラバラではなく班全員でゴールしなければならない。

・管理者の条件訓練
「どのような基準で管理者に選ばれるか」 「管理者は何を期待されるか」 「管理者の任務とは」これらについて考え、意見を出し合い、論争を行う。

・歌唱訓練
 歌詞の持つ意味をとらえ、かつ細やかな感情でていねいに歌うことで、相手に切々と訴える表現力を身につける。

・素読訓練
 ある短い文章に秘められた真の意味を理解し、管理者の理想の姿と現実とを比較、あるべき姿を理解する。

・道順訓練
 実際のビジネスでもたびたび起こる「道順」の説明を、言葉少なく具体的に、分かりやすく説明するコツを習得する。

・礼儀訓練
 ディスカッション・解説に始まり、ビジネスパーソンのみならず社会人としての正しい挨拶、会釈、言葉遣いなどを班員同士で指摘しあう。

・報告書訓練
 報告したい内容を簡潔な文章で表現し、報告書の基本的な書式や書く習慣を身につける。

・私の抱負
 訓練の成果を渾身の力でスピーチする。厳しい訓練の中で自分は何をつかんだか、会社に戻ったら何を行うのかを、相手に「伝わるまで」訴える。

体験者の証言

 かつて同校の研修を修了した男性はいう。

「有名な大手企業も社員を派遣していると聞いた。研修生は全員、紺色のズボンと白い上着を着用し、上着には合格しなければならない訓練の名前が一つずつ書かれたリボンがピンで付けられ、合格するとそのリボンを外していく。朝5時30分に起床すると校庭で朝礼があり、体操、掃除、朝食と続くが、すべて訓練の一環なので、掃除に不十分な点が見つかれば一からやり直しとなるし、食事も姿勢を崩したり残すことは許されない。口の中に食べ物を入れたまま立ったりすれば、大勢の前で叱責を受けることになる。

 その後も数分刻みで座学に加え挨拶、体操、競歩、歌唱などの訓練が延々と続き、声を発する際はすべて大声を出す必要があり、片時も気が休まることはなく、教官からは容赦なく罵声を浴びせられ、常に緊張状態が続く。ちなみに今はどうかは知らないが、夜は食堂の自動販売機で缶ビールを買うことができ、短い時間だがグループの人たちと飲みながら談笑できた。なぜかうちのグループでは缶ビールと缶コーヒーを両方買って交互に飲む『コーヒービール』というのが流行っていた。研修期間中はちょっと精神状態が正常ではなかったのは確かだ」

 特につらかったことは何か。

「何がつらいというより、肉体的にも精神的にもずっとつらいのだが、個人的には10カ条からなる『行動力基本動作』をすべて暗記して、それを教官の前で一言一句間違えずに、大声で暗唱できなければ合格できないという訓練がきつかった。また、最終日あたりにすべての訓練の最後に行われる、訓練の成果や今後の抱負などを大声でスピーチしなければならない訓練もつらかった。教官から『内容が浅い』と判断されると何度もやり直しをさせられ、やっと合格するときには全員が号泣状態となっていた。

 一方、他の訓練に比べれば夜間行進訓練は歩くだけなので結構ラクだった。ただ、途中で何度も抜き打ちで教官が車で状況をチェックしに来るので、気は抜けない。他のグループは、一部の参加者がおしゃべりをしながら歩行していたことが原因で、40キロ歩いた次の日に『やり直し』をさせられていた。また、普通に人が通行している駅の前で大声で歌う『駅頭歌唱』も、日々の訓練で完全に感覚が麻痺しているせいもあり、恥ずかしくもなんともなくラクだった。

 このほか、座学では、さまざまな課題なテーマについて自身の考えを相手に論理的に伝えたり、相手を説得するような訓練、電話応対の訓練もあったが、そういうことが苦手な人は大変そうだった」

 過去に同校を修了した別の男性は、こんな苦労があったと振り返る。

「どのグループにも、態度が悪かったり、やる気がなかったりする問題児がいて、誰かが失態をおかすとグループ全員で連帯責任を取らされるので、その点はきつかった。正直そういうメンバーには腹が立った」

研修の成果

 気になるのは、研修に参加した成果だが、この男性はいう。

「自分にとって意味があったのか、なかったのかは正直よくわからない。研修で行われるような内容について、過去に経験が少ない人であれば、それなりに効果はあるかもしれない。一方、たとえば学生時代に体育会系の部活に所属して毎日キツイ練習に耐えてきたような人や、すでにノルマがきつかったり過酷な労働環境の会社で働いているような人にとっては、改めて受講する必要はないだろう。また、カリキュラムの内容はまさに『昭和の営業マンを鍛える』といったものばかりなので、業種や業態によってはまったく意味がないだろう。個人的には『いい経験はできた』とはいえる」

 別の過去の修了生はいう。

「私の周りでも『おかげで何でも耐えられるようになった』『怖いものがなくなった』と言う人もいれば、『まったく意味がなかった』と言う人もいる。たとえば企業が新人や管理職の候補者などを参加させて、この程度の厳しさに耐えられる人材かそうではない人材なのかを振るいにかけるという使い方はあるだろう」

 こうした研修について、中堅IT企業役員はいう。

「ウチのような会社的には時代遅れで意味がない。SEやプログラマーなどのエンジニアに限らず、営業やマーケティングの担当者もロジカルで高い専門スキルが求められるので、専門的な内容の勉強をさせたほうがよい。そもそも業務上、大声を出したり体操したりする機会はないし、社内とも社外ともメールやSlackなどのチャットでやりとりするので、今どき電話とかもしない」

 別の中堅企業の役員はいう。

「カリキュラムの内容を見る限り、ウチの会社で導入しようとは思わない。ただ、どの業種であれ『諦めずにやりきる力』というのは意外に重要だったりするので、まったく無駄とはいわないが、たった数日研修に参加しただけで身につくものではない。そういう能力は案外、人それぞれの才能だったり、過去の学生時代から社会人生活での経験で培われてくるものなので、研修でどうこうできるものではない」

(文=Business Journal編集部)

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