京都大学の正規社員募集で提示されている「年収244万円~312万円」が低すぎるとして一部で話題を呼んでいる。どの大学でも事務職員の年収はこの水準なのか。また、給与や業務内容の重さ、忙しさなどを勘案すると大学事務職員というのは割に合う仕事といえるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
東京大学と並ぶ難関国立大学の京都大学。京都市内に京阪神宮丸太町駅~京阪出町柳駅の2駅にまたがる形で約75万平方メートルという広大な吉田キャンパスを保有。このほか、桂キャンパス、宇治キャンパスに加え、研究林(北海道、和歌山、京都)、複合原子力科学所(大阪)、飛騨天文台(岐阜)、ヒト行動進化研究センター(愛知)、火山活動研究センター(鹿児島)、赤道大気観測所(インドネシア)など国内外に数多くの施設を擁し、その総面積は50.49平方キロメートルにもおよぶ。医学部も擁する総合大学ゆえに学生数は学部生だけで1万2852人に上るため(2023年5月1日現在)、その職員数も8272人(うち特定有期雇用教職員は2097人)と大きな数字となっている。
その京大は大学事務(支援職員)の正規社員を40名程度、募集中だが(締切:5月22日)、前述のとおり提示されている年収の低さが話題を呼んでいる。仕事内容は大学の研究室または事務部門などに所属し教員・事務職員(総合職)の監督の下で事務処理の業務に従事するというもの。具体的には、研究室での総務・経理・研究に関する事務業務、教員・研究者のサポート、学会運営や、事務部門における総務、経理、教務、図書など(事務や資料作成、担当業務における教員や学生への対応、外部への発注対応など)となっている。
学歴・職歴・年齢は不問で、応募条件は基本的なパソコンスキル(Word、Excel、電子メール等)を有することくらい。転職サイトに掲載されている募集要項には「ワークライフバランス実現・プライベートとの両立が可能です」と謳われている。
フルタイム勤務の場合は月給20万4600円で、年2回の賞与や超過勤務手当などを含めると概算年収は312万円。週30時間勤務の場合は月給15万8400円で概算年収は244万円となっている。もちろん正規社員なので、住居手当や扶養手当などの各種手当があり、厚生年金、労災保険、雇用保険に加入する。
この内容を受け、SNS上では次のようにさまざまな反応が寄せられている。
<明大とダブルスコア。国立大心配になります>
<何かの社会実験なのでしょう>
<零細かつ超斜陽業種(書店)の当社より安い>
<パートでももう少し貰ってる>
国立大学は全般的に低い傾向
大学の事務職員とは、どのような仕事内容なのか。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏はいう。
「部門としては教務や就職支援、地域連携から総務、人事など幅広くあります。大学教員や学生をバックアップする仕事・部門もあれば、民間企業と変わらない仕事・部門もあります。企業と同じく、大学も大規模校だとそれだけ人数が増えることになります」
なぜ、京大の事務職員の給料は低いのか。
「京大が低いというよりも国立大学が全般的に低い傾向にあります。ただでさえ国からの補助金が減少傾向にあり、そこにもってきて物価高騰です。京大などのトップ校であっても予算が不足しており、人件費を圧縮するしかありません。なお文部科学省『国立大学法人及び大学共同利用機関法人の役職員の給与等の水準(令和3年度)の取りまとめ』によりますと、事務・技術職員の平均年収は595.9万円(諸手当を除く)でした」(同)
私立大学だと職員の賃金や待遇は大きく違ってくるのか。
「大学の規模や財政状況によって変わってきます。大規模校で財政に余裕のある大学だと、役職者は平均年収が1000万円を超えてくる大学もあります。一方、中規模校ないし小規模校で財政状況が悪いところだと、会社員の平均年収よりも低い水準になるところがあります。さらに、定員割れが続くなど厳しい大学・学校法人では過去に給料遅配なども起きました」(同)
その忙しさや労働負荷、労働時間、賃金などを勘案すると、大学職員という仕事は待遇が良いといえる仕事なのか。もしくは、割に合わなくて待遇が悪い仕事といえるのか。
「大学によって相当変わってきます。ただ、全般的には仕事の負担の重さを考えると、やや安いのでは、との印象があります。SNSでは『大学職員は公務員とほぼ同じで待遇がいい』との意見もありますが、大学によって相当変わるのではないでしょうか」(同)
(文=Business Journal編集部、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)