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トヨタ系、下請けに金型の保管を強制、数億円の被害か…悪質な下請けイジメ実態

文=Business Journal編集部
トヨタ系、下請けに金型の保管を強制、数億円の被害か…悪質な下請けイジメ実態の画像1
トヨタカスタマイジング&ディベロップメントの社屋(同社の公式サイトより)

 またトヨタグループで不正が発覚した。30日付「読売新聞」は、トヨタ自動車が9割以上の株式を保有する子会社・トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(トヨタC&D)が、自社保有の金型などを下請け企業に保管させるほか、パーツを不当に返品していたと報じた。読売記事よれば、下請け業者約50社の被害は数億円に上る可能性があり、公正取引委員会が下請法違反を認定する方針だという。同様の行為はトヨタグループ内で広く行われているのか。また、3月には日産自動車が下請けの自動車部品メーカーへの支払代金を不当に減額していることが発覚したが、このような下請けいじめともいえる行為はトヨタでもみられるものなのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 トヨタC&Dの設立は2018年。レーシングカーや救急車、道路パトロールカー、道路巡回車などトヨタの特装車の開発、エアロパーツ・サスペンション・エクステリアパーツなど車両パーツの開発のほか、レース現場での技術サポートも手掛けている。トヨタ自動車が9割以上の株式を保有するトヨタ系列企業だ。

「金型と聞くと小さいイメージを持たれがちだが、自動車の製造に使う金型にはかなり大きくて重いものも少なくない。特にトヨタC&Dは大型の特殊車両などを数多く製造しているとのことなので、大型で特殊な金型が多いと思われる。下請け企業側としては、そんな大きな金型をたくさん保管させられれば、自社の在庫を保管するために倉庫を確保しなければならないことになりコストが発生する。金型はトヨタC&Dの資産なので下請け企業は勝手に処分できないし、処分するにも費用がかかる。要はトヨタC&Dは本来は自社で負担すべきコストを下請けに肩代わりさせているわけで、かなり悪質な下請けイジメといえる。輸送のコストや手間を省きたかったという考えもあったのでは。公取委が動いたということは、被害を受けている下請け企業から通報があったと考えられ、よほど困っていたのでは」(自動車メーカー関係者)

 大手自動車メーカーとしては3月、日産自動車が下請けの自動車部品メーカー36社への支払代金約30億2300万円を不当に減額していたとして、公取委が下請法違反を認定し再発防止を勧告。日産は下請けメーカーに対し、契約書で定められた発注額から「割戻金」として一部を差し引いた代金を支払っていた。報道番組『WBS(ワールドビジネスサテライト)』(テレビ東京)によれば、下請けに金額を決めないままに数量と納期だけを指定して製造させ、納品時に見積額から5割を減額させることもあったという。

 こうした下請けイジメともいえる行為は自動車業界で広く行われているのか。22年12月、公正取引委員会がエネルギーコストや物流費などが上昇しているにもかかわらず仕入先と取引価格について適切な交渉を行っていないとして公表した13社のなかに、トヨタ系部品メーカー大手のデンソーと豊田自動織機が入っていた。

「トヨタは半年に1回のペースで部品メーカーと発注額の見直し協議を行っており、原価低減を名目に毎回1%程度の値下げを行っているが、原材料価格の上昇などがあった場合は部品メーカーに発生するコスト増分の一部をトヨタが負担するなど助けることもある。また、トヨタの下請け企業に対する原価低減指導は厳しいが、コスト低減に伴う利益はトヨタと下請けが折半するかたちで下請けにも還元している。このようにトヨタ本体による露骨な下請けイジメというのは近年ではほとんどない。ただ、たとえば2012年には部品メーカーに円高協力金という名目で値引き要請をするなど、たまに“いかがなものか”と思われることをすることもある」(自動車メーカー関係者)

非常にみえにくい構造

 トヨタのグループ企業では不正が続いている。22年、日野自動車はエンジンの排出ガスや燃費の試験で不正を行っていたと公表。23年、ダイハツ工業は完成車の試験不正に伴い出荷停止を実施。同年、豊田自動織機はエンジン認証試験で不正を行っていたことを公表。そして今月にはトヨタ自動車の「型式指定」の認証不正が発覚した。とくに日野自動車とダイハツはトヨタの子会社であり、不正に走った背景には親会社であるトヨタからの強いプレッシャーもあったと指摘されている。

「ダイハツは1998年にトヨタの子会社となり、2014年にスズキに軽自動車シェアトップの座を奪われ、トヨタの指示で新型車を短い開発期間で断続的に投入することを迫られ、それが試験不正につながったといわれている。16年にトヨタの完全子会社となってからは、トヨタグループ全体の新興国向け小型車の開発を担い、大きなプレッシャーのもとで短期開発を強いられた。さらに、法規認証室の人員を大幅に削減してきた背景には、トヨタから間接部門の人員削減を迫られたこともあるといわれている。子会社イジメとまではいえないが、非常にみえにくい構造が根底にあり、わかりやすい“イジメ”より根が深いとも感じる」(自動車メーカー関係者)

 ダイハツの不正でも似たような構造があるという。

「(ダイハツが)不正に手を染めた背景として特別調査委員会が指摘しているのが『上意下達』の社風だ。例えば一部の役員がエンジン開発の土壇場になって燃費改善を指示し、エンジン設計部の管理職が開発スケジュールや技術的な裏付けを無視してこれを安請け合いし、パワートレーン実験部の担当者に丸投げしていた。特別調査委員会の榊原一夫委員長は『パワーハラスメントがある程度あった』と認めている。

 日野自動車のあるOBによると、こうした『下の者からモノが言えない』『できないことをできないと言えない』という社風になったのは『トヨタが親会社となって、日野の社長にトヨタ出身者を派遣してからだ』と指摘する。トヨタは01年に日野の株式を追加取得して出資比率を50.1%とし子会社化するとともに、トヨタで副社長を務めた人材を日野のトップに据えた。小木曽社長の前任で17年から4年間、日野の社長を務めた生え抜きの下義生氏を除いて子会社化後は全員がトヨタ出身者だ。

 トヨタ出身の日野の社長は、日野の幹部や社員を『見下した態度』をとることが少なくなく、社内では上に逆らうことは許されない雰囲気になっていったという。そもそも日野に送り込まれた社長らは、販売台数や業績で実績を上げてトヨタにその力を示さなければならないというプレッシャーを受けており、上意下達の社風にしていったのは容易に想像できる」(ジャーナリストの桜井遼氏/23年12月14日付当サイト記事より)

(文=Business Journal編集部)

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