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「スズキ・ジムニー購入→乗り心地が悪くて後悔」は本当?批判が的外れな理由

文=Business Journal編集部、協力=桑野将二郎/自動車ライター
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スズキ「ジムニー」(「Wikipedia」より/Shirley 501JFW

 低価格で小回りが利くとして日本の消費者に重宝されている軽自動車。なかでも根強い人気を誇るスズキ「ジムニー」や、その兄弟車で登録車の「ジムニー シエラ」を購入したところ、乗り心地が悪くて後悔したという評判も一部で聞かれる。果たして軽自動車には“安かろう・悪かろう”という側面はあるのか。また、スズキの車の購入を検討する際には注意すべき点などはあるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 日本独特のジャンルである軽自動車の規格は道路運送車両法によって定められており、全長    3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下、排気量660cc以下となっている。SUVやステーションワゴン、セダンなど他のタイプと比べると室内空間が狭く走行性能が劣るものの、道や駐車スペースが狭い日本では小回りが利くとして好まれる傾向がある。さらに本体価格や自動車税などの維持費が安い点も魅力の一つだ。

 今年1~6月のブランド通称名別新車販売台数ランキング(日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会の発表による)では、乗用車・軽自動車あわせた総合順位でホンダ「N-BOX」が1位、スズキ「スペーシア」が3位、スズキ「ハスラー」が7位と上位に食い込んでいる。

日本市場のニーズを研究し尽くしたジムニー

 そんな軽自動車のメーカー別新車販売シェア1位(2023年度)であり、軽自動車の代名詞といえるスズキ車。その特徴とは何か。中古車販売店経営者で自動車ライターの桑野将二郎氏はいう。

「スズキというブランドの特徴を簡潔に語るなら、日本の軽自動車市場における高いシェアと人気車種を生み出してきたプロダクト力に尽きると思われます。独自のアイデアとパッケージングで、時代をリードするコンパクトかつ経済的な軽自動車を、常に市場へ送り出してきたメーカーであり、また四輪駆動車のジャンルにおいて常に強い存在感を示してきたという歴史もあります。インドや東南アジアなどのグローバル展開でも成功を収め、革新的な技術と高い信頼性は世界的に認められています。ジムニーはそのスズキを象徴するアイコン的な存在であり、日本市場のニーズを研究し尽くした軽自動車のジムニーと、世界市場のニーズを高い次元で形にしたジムニー シエラは、それぞれの持ち味と存在意義があるといえるのではないでしょうか」

 スズキの「スペーシア」「ハスラー」「ワゴンR」「アルト」と並んで人気の「ジムニー」、そして「ジムニー」の登録車版である「ジムニー シエラ」をめぐり、乗り心地が悪いという評判が一部で聞かれる。

 1970年に初代が発売されたジムニーの特徴は、堅牢性を漂わせる箱型ボディやリヤボディに装着されたスペアタイヤに象徴されるオフロード車である点。現行の4代目は全長3395mm、全幅1475mm、全高1725mmというサイズで、悪路でも車体の底面やバンパーがぶつからないように最低地上高は205mmに設定。3ドアタイプの大人4人乗りで、FRレイアウトと機械式副変速機付きパートタイム4WDを採用し、5速MTと4速ATがラインナップ。アウトドア好きや険しい道を走行する機会が多いユーザ向きとされる。

 ジムニーの兄弟車として1993年に発売されたのがジムニー シエラだ。軽自動車ではなく登録車扱いの規格となっており、現行モデルは小型エンジンの直列4気筒1.5L NAエンジンを搭載している。

 メーカー希望小売価格(税込み)はジムニーが165万4000~200万2000円、ジムニーシエラが196万2400~218万3500円。納期はともに約1年ほどとなっており、人気の高さがうかがえる。

あえてシエラを選ぶ理由を探すほうが難しい?

 ジムニーとジムニー シエラ、どちらが買いといえるのか。

「両者を比較する人は少なくないでしょう。角張ったボクシーなスタイルと、ラダーフレーム構造に良く動く足回りをマッチさせた機能性の高さは、いずれも甲乙つけがたい優れたものがありますが、経済性やバランスの良さで軽自動車のジムニーを推す人が多い傾向にあると思われます。比較した場合、皮肉なことに軽自動車のほうが劣ってそうな面において、むしろジムニーの良さが際立ってしまったり、想像よりも軽自動車で十分だと思わせてしまう、ジムニーのポテンシャルの高さがクローズアップされがちです。

 例えば、エンジンひとつをとってみても、3気筒660ccで64psのジムニーと4気筒1500ccで102psのシエラだと、圧倒的に後者のほうがパワーでも静粛性でも優れていそうに思われますが、実際に乗り比べてみると圧倒的なアドバンテージをシエラには感じにくかったり、メカニカルノイズも排気量を鑑みた時に、シエラをあえて選ぶ理由にはなりにくいレベルです。

 また、室内の広さや使い勝手についても、シエラの優位性は見当たりません。室内長、室内幅、室内高は、実はどちらも共通のサイズであり、シエラが小型乗用車だからといって圧倒的に広いわけでもなく、静かだというわけでもありません。

 一方で、軽自動車であるジムニーより悪い面が目立ってしまうシエラは、そもそも海外向けに作られているのだから仕方がない、という意見も多く聞かれます。ジムニーという車種の素性は、昔ながらの本格的なクロスカントリー4WDなので、頑丈なはしご型のラダーフレームにサスペンションを取り付け、その上にボディを載せるという伝統的な車体構造で、現代の主流であるモノコックボディと比べると、独立した車体構造ゆえ剛性が高い半面、ボディと足回りがバラバラに動くことで上体がユッサユッサと揺れるような挙動を感じてしまいます。

 これが、乗り心地が悪いとされる大きな要因だと考えられますが、こうしたデメリットの部分はジムニーよりもシエラのほうが際立ってしまいがちです。前後の車軸を結ぶ距離=ホイールベースの数値は、まったく同じ2250mmですが、左右の車輪の距離=トレッドはシエラのほうが広く、安定感があり凸凹道での左右の揺れは感じにくいはずです。しかし日本でのマーケティングを優先したジムニーと違い、海外での販売を重視したシエラは足回りが高速走行向けのセッティングであるため、日本国内の一般道を走るようなシーンでは段差で跳ねるような動きをしたり、大きな揺れを感じやすい傾向にあります。

 総合的に比較検討すると、あらゆる面でジムニーに軍配が上がり、最終的にはアフターパーツの豊富さや、維持費の安さなども含め、あえてシエラを選ぶ理由を探すほうが難しいという人が少なくないのでしょう」(桑野氏)

振動や騒音よりも信頼性や耐久性を優先して設計

 ジムニーとジムニー シエラの購入を検討する際には押さえておくべきデメリットはあるのか。また「乗り心地が悪い」ということはあるのか。

「そもそもジムニーという車種の存在価値を理解することが大切です。ジムニーもシエラも、前述のように伝統的なラダーフレーム構造を持つ本格的な4WD車です。舗装路での走行性能や快適性よりも、悪路での走りや絶対的な走破性能が重視されており、林業やハンターなどのプロが山道でスタックせず安心して走れるように設計されています。壊れにくい頑丈な構造を徹底し、振動や騒音よりも信頼性や耐久性を優先して設計されており、舗装路を走っていると、轍でハンドルがとられたり、凸凹道でボディが大きく左右に揺れるといったことが当たり前のように起こります。こうした挙動や音を不快に感じるか、楽しいと感じるかは、乗る人によって異なるでしょう。それらは善し悪しではなく、ジムニーとシエラの個性であり、あえて選ぶ理由のひとつにもなりうる性能のひとつなのです」(桑野氏)

(文=Business Journal編集部、協力=桑野将二郎/自動車ライター)

桑野将二郎/自動車ライター

桑野将二郎/自動車ライター

1968年、大阪府生まれ。愛車遍歴は120台以上、そのうち新車はたったの2台というUカー・ジャンキー。中古車情報誌「カーセンサー」の編集デスクを務めた後、現在はヴィンテージカー雑誌を中心に寄稿。70~80年代の希少車を眺めながら珈琲が飲めるマニアックなガレージカフェを大阪に構えつつ、自動車雑誌のライター兼カメラマンとして西日本を中心に活動する。
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