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吹き飛び続出のマンホール蓋、業界の意外な実態…IT化で高い製造技術が必要

文=Business Journal編集部
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「gettyimages」より

 昨日(21日)夜、東京都内はゲリラ豪雨に見舞われ「記録的短時間大雨情報」が発表されたが、下水道管内の水が地上に吹き出したことに伴いマンホール蓋が吹き飛ぶ事例が続出した。鋳鉄製のマンホール蓋は直径が約60cm、重さが約40~50kgのものが多く、通行人に直撃すると重症を負ったり死亡するリスクもある。このマンホール蓋はどのような企業がどのように製造しているのか。また、市場規模はどれくらいあるのか。普段はあまり注目されないマンホール蓋業界の実態をみてみよう。

 21日夜の帰宅ラッシュ時間帯を襲った激しい雨。午後7時までの1時間に約100ミリの降雨量が確認された東京・港区では麻布十番駅近くの交差点が冠水し、千代田区の市ケ谷駅が浸水するなど広い範囲で被害が発生した。この影響でJR山手線や東海道新幹線が一時、運転を見合わせるなど交通機関にも乱れが生じたが、新宿区、品川区、文京区などではマンホール蓋が吹き飛び、マンホールの穴から地上に水が勢いよく吹き出すという異例の事態も発生した。

 全国で約1500万カ所に設置されているともいわれるマンホール蓋だが、その製造業界の実態がクローズアップされることが少ない。公道に設置されたマンホール蓋は大型トラック・バス・トレーラー・消防車などの重量が重い車両の走行にも耐える必要があり、その強度基準は日本グラウンドマンホール工業規格によって定められており、「破壊荷重>衝撃を考慮した輪荷重×安全率(=5)」となっている。鉄・炭素・ケイ素などを混ぜた合金である鋳鉄製ものが一般的で、非常に強靭。一般道路のマンホール蓋は総重量20~25tクラスの大型車両・特殊車両の走行にも十分に耐えられるようになっている。

シェアが高い大手メーカーしか生き残りは困難

 中小事業者を含めると国内にマンホール蓋を製造する企業が何社あるのか、正確な数字は不明だが、鋳物産業の縮小に伴い数は減少傾向にあるとみられる。業界最大手で全国のマンホール蓋の約6割を占めるとされるのが日之出水道機器(福岡市)だ。同社は1961年にダクタイル鋳鉄の製造に成功し、日本初のダクタイル鋳鉄製マンホール蓋を発売。高強度であるため従来のものより蓋の厚みは薄く、80kgあった重量が半減したため、市場シェアを拡大させた。

 現在では最新鋭の設備を設けて製造のIT化を進めており、主力商品の「次世代型高品位グラウンドマンホール」は「これまで技術的に困難とされてきたガタツキ防止と開放性能(食い込み力)の両立という二律背反する課題を解決し、さらに耐用年数の2倍以上(当社従来製品比較)という長期にわたる耐久性を実現」(同社HPより)。また、「維持管理時の開閉作業の効率化、さらに災害時・緊急時の復旧作業のスピードアップ」(同)も実現した。

 同社はマンホール蓋以外にも上下水道設備関連のさまざまな蓋や道路、橋梁、港湾関連の設備を手掛けており、2003年にホールディングス体制に移行してからは、強みを持つ小規模な鋳鉄関連企業などへの買収を積極的に行い、成長を続けている。

 マンホール蓋の製造を手掛ける会社の社員はいう。

「種類によっても違うが、公道でよくみられる直径60cmのマンホール蓋の価格は一つ6万円ほどであり、メーカーとしては大きな利益は見込めないため、大量生産できないと採算が取れない。また、近年ではマンホール蓋の性能向上が進んでいるのに加え、上を走行する車両のタイヤの衝撃で割れたり飛び跳ねて穴から外れたりすることは許されず、高い品質が求められる。そのため開発・製造のIT化が進んでおり、大きな投資をする余力がなく老朽化した設備しか持たない中小企業が続けるのは限界がある。よって、おのずと大量生産してシェアが高い大手メーカーしか生き残っていくのは難しいだろう」

(文=Business Journal編集部)

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