低価格で高品質とされてきたファストファッションチェーン「ユニクロ」とその姉妹ブランド「ジーユー(GU)」。少し前にX(旧Twitterユーザ)が投稿した、
<GUがユニクロみたいな価格になりユニクロがグローバルワークみたいな価格になってしまった>
<スウェットセット、おまえ田舎の中学生のお小遣いで買えるコンビニ行きユニホームじゃなかったんか>
というポストが一部で話題を呼んでいる。特にユニクロの商品価格については、かつてと比較すると上がったと感じている消費者も少なくないようだが、他のチェーンと比較して、ユニクロとGUのコスパはどう評価されるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
ファーストリテイリングが運営するユニクロは国内に798店舗、海外に1697店舗の計2495店舗(2024年5月末)を展開し、機能性が高い衣料品を低価格で販売することで多くの消費者から支持されてきた。4点で990円の「50色ソックス」をはじめとする1000円以下のインナー類、590円の「ドライカラークルーネックTシャツ」、2990~3990円の「ウルトラストレッチセット」などのルームウェア、2000円台からあるワイドパンツ、ビジネスウェアとしても使える「感動スリムパンツ」(3990円)など、あらゆる用途で普段使いできる衣料品が手頃な価格で揃っている。
一方、「パフテックコンパクトジャケット」(5990円)、1万円以上のコート類・パーカ類、「感動ジャケット」(6990円)など、それなりの価格の商品も多い。
ちなみに近年のヒットシリーズをみてみると、「ウルトラライトダウンジャケット」は6990円、「ヒートテック」はソックス類が590円~、「クルーネックT」が1290円~。「エアリズム」は「クルーネックT」が1290円~などとなっている。
一方、同じくファストリが運営するGUはユニクロより一歩踏み込んだ低価格となっている。例えば、「レギュラーソックス3P」は3個入りで590円、Tシャツは「コットンカラーT(半袖)」が490円、「フリースラウンジセット(長袖&ロングパンツ)」が1990円となっている。
非常に慎重に値上げを敢行
現在のユニクロとGUの価格をどう評価すべきか。アパレル業界でトレンドリサーチやコンサル事業などを手がけるココベイ社長の磯部孝氏はいう。
「結論から申し上げますと、商品の品質と価格水準を考慮すると、高すぎるということは決してないといえます。日本は約20年にわたりデフレが続き、ユニクロをはじめとする小売企業はなんとか低価格を維持しようと戦ってきました。そしてここへきて、原材料価格・エネルギーコスト・人件費の高騰や円安などのやむを得ない要因が重なり、徐々に価格を上げているという状況です。
デフレが続いていた間、ユニクロは値上げを行い、10%以上も客数が落ちるという客離れを起こし、後に価格を修正しました。その失敗の教訓から、現在、ユニクロは非常に慎重に値上げを行っています。具体的には、『ブロードシャツ』を1990円(2020年)から2990円に値上げする一方、定番のジーンズは価格を据え置いたり、期間限定で一部商品を値下げして特別価格で提供したりと、ユニクロ全体でみたときに値上げのイメージが伝わらないようにして、なんとか客離れが起きないように努力しています」
グローバルワークの戦略
前述のXポストで引き合いに出されている「グローバルワーク」とは、大手アパレルのアダストリアが展開するブランドで国内の店舗数は約200店舗。同一カテゴリの商品で比較すると、ユニクロの5000~6000円台かそれより上の価格帯の商品で競合しているといえる。昨年には新業態として20~40代のファミリー層を主対象とした「グローバルワーク・スマイルシードストア」を出店。従来のグローバルワークより低価格な商品を揃えているのが特徴で、現在の店舗数は12店舗(24年2月現在)となっている。
「まず、グローバルワークに関していうと、近年ではデザインのシンプル化の傾向がみられ、着こなしやすさを意識しており、ユニクロに近寄っているという印象を受けます。一方で、フェイクレイヤードTシャツなど、ユニクロにはないファッション性を重視した商品も提供しています。
一方のスマイルシードストアは、デザインや素材も含めて、とにかく安さを追求しており、そのため売り場のオペレーションも従来型のグローバルワークとは異なり、畳み陳列をせずにすべての商品をハンギングしています。私も2店舗ほど訪問しましたが、盛況といえる状況ではなく、お客さんから魅力あるお店だと感じてもらえるようになるまでには、もう少し時間がかかりそうです。まだ全国で約10店舗ほどなのでテスト段階といえるでしょう。
アダストリアが成長ブランドに位置付けているのは、17年から展開している『ラコレ』です。現在の店舗数は78で、売上が大きく伸びており、アパレル品だけではなくリビングファブリック、フレグランス、ヘルス&ビューティー、クッキーなどの食品などバラエティーに富んでおり、ライフスタイルブランドという位置づけです。アダストリアの得手・不得手としては、価格よりは品揃えやファッション性で勝負するほうを得意としているのではないでしょうか」(磯部氏)
売り方が真逆のユニクロと「しまむら」
同じく低価格をウリとする大手アパレルチェーン「しまむら」「ワークマン」とユニクロを比較した場合、どのような違いがあるのか。
「『しまむら』の国内店舗数は約1400であり、約800店舗のユニクロとは、まず規模の面で大きな差があります。販売方針にも大きな違いがあります。ユニクロができるだけ在庫切れをなくして商品を積んだ状態を維持しているのに対し、『しまむら』は“売り切れ御免”のスタイルで、一つのアイテムについて各色・各サイズ1点しか置いていないというケースもあります。両者ともに業績は良いので、どちらが正解というわけではありません。
ユニクロは安価な商品に加えて高機能の比較的高めの商品も揃えているのに対し、『しまむら』『ワークマン』はとにかく低価格重視のため店舗全体でみるとユニクロより安い商品で占められており、ユニクロが高いと感じる人は『しまむら』や『ワークマン』に行くので、客層はそれほど重なってはいないと考えられます」
小売チェーン関係者はいう。
「ユニクロは相変わらず4点で約1000円のソックス、約600円のTシャツなど、消費者にとって消耗品的な商品を安く提供し続けています。その一方で価格帯が上の高機能商品も扱っており、『高い商品も安い商品も売っている』というのが正しい表現ではないでしょうか」
(文=Business Journal編集部、協力=磯部孝/ファッションビジネス・コンサルタント)