(「ジャパンディスプレイ」HPより)
JDIはソニー、東芝、日立製作所の電機大手3社の中小型液晶事業を統合して今年4月に発足。資本金は2300億円。産革機構が70%、ソニー、東芝、日立が各10%ずつ出資した。価格の変動が激しいテレビ用の液晶パネルは手掛けず、市場が急拡大するスマートフォン(多機能携帯電話)やタブレット端末向けの液晶パネルに特化する。従業員は統合前より1400人減らし6200人体制。16年3月期の売上高の目標は統合前の3社の実績の合計の1.3倍にあたる7500億円だ。
新会社の社長の大塚周一氏は就任会見で「13年に有機ELパネルを量産する」と述べた。高精細な有機ELパネルでは韓国・サムスン電子が世界に先駆けて実用化している。JDIは国内勢として初めて13年に量産化を目指す。二番煎じでは勝てないので消費電力を減らすなど改良したタイプを開発するという。
JDIの先行きはバラ色ではない。12年の中小型パネル市場は激戦になる。スマートフォンやタブレット端末向けにフルハイビジョンクラスの高品質のパネルが登場。これまで主流だったパネルの価格は10%以上下落すると予想されている。
中小型液晶パネルの出荷金額での世界シェア(11年実績)はJDI(3社合算)が19.9%でトップ。以下、シャープ(15.8%)、台湾の奇美電子(11.1%)、韓国のLGディスプレー(9.0%)、台湾の友達光電(7.4%)、韓国のサムスンモバイル(7.2%)と続く。
世界2位のシャープは3月末、電子機器の受託製造サービス(FMS)世界最大手の鴻海精密工業と資本・業務提携した。鴻海は米アップルのアイフォーンやアイパッドの組立を一手に引き受けており、シャープの工場もアップル向けに大きくシフトする。3位の台湾の奇美電子は、鴻海の傘下。奇美電子側の役員が総退陣した。シャープと奇美電子を合わせたシェアは26.9%となり、JDIを上回る。ソニーは5位の友達光電からパネルを調達することを考えている。
6月25日、ソニーとパナソニックは次世代テレビの本命とされる有機ELテレビの共同開発で合意した。液晶テレビで韓国メーカーに完敗して経営危機に陥った国内の2大メーカーの提携は、ニッポン家電の起死回生策と受け取られたが、実情はかなり違う。ソニーが友達光電との有機ELの提携交渉を優位に進めるためにパナソニックを味方に引き入れたのだ。低コストで量産できる技術を13年に確立することを目指しているが道程は遠い。