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産業革新機構は公的資金を早期に回収できるのか?

日の丸液晶会社、ジャパンディスプレイの上場計画

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 パナソニックとの提携のシナリオを描いたのが、ソニーの最高戦略責任者(CSO)の斎藤端氏。ハワード・ストリンガー取締役会議長の側近だ。米ラスベガスでCES(全米家電見本市)開催中の今年1月10日、ストリンガー氏は平井一夫副社長(当時、以下いずれも当時の肩書き)、斎藤端業務執行役員EVP、加藤優執行役EVP、藤田州孝業務執行役員EVPの幹部4人を集め、自らの続投を宣言し、この4人を新体制の核にすると伝えたという逸話が残っている。ストリンガー氏は経営責任を感じて辞める気などさらさらなかったのだ。

 4月1日付で、社長兼CEO(最高経営責任者)となった平井一夫氏の下で、斎藤氏と加藤氏の2人の執行役が、ソニーグループ全体の財務、経営戦略、事業戦略を担当。藤田氏は人事、総務を受け持った。「平井体制は、ストリンガー時代を踏襲したアンシャン・レジーム(旧組織)」と批判されるゆえんだ。

 斎藤氏は半導体事業部長時代に頭角を現わし、企画担当役員としてJDIの設立に奔走。日の丸中小型液晶会社という大義名分の下、ソニーは採算の悪かった小型液晶部門だけでなく、鳥取、愛知・東の不採算工場と子会社ソニーモバイルディスプレイの合計2000人の人員の切り離しに成功した。

 JDIの設立にあたって、税金を使ってリストラをやってのけた斎藤氏が二匹目のドジョウとして狙っているのがソニーとパナソニックの有機ELテレビの提携。JDIのように、ソニーとパナソニックの有機EL事業を新会社に移管し、そこに産革機構の公的資金の注入を狙うというシナリオだ。税金をテコに有機ELの開発の資金負担とリスクを軽減しようという一石二鳥の試みだ。

 極論すれば、JDIは、税金(=産革機構の出資)を引っ張ってくるための受け皿だったのである。日の丸を冠することで公的資金を投入する大義名分も立つ。だが、日の丸をつければ、うまくいくという保証はどこにもない。日の丸半導体といわれたDRAM大手エルピーダメモリは、今年2月に倒産、公的資金を回収できなかった。

 日の丸中小型液晶会社、JDIへの産革機構の出資額は2000億円。投資した資金を回収する責任は極めて重い。IPO(新規上場)をして、上場後に株価が上昇して持ち株を売却できれば、産革機構は出資額を上回る金を国庫に返納できるわけだ。

 JDIの大塚周一社長はかつて、エルピーダメモリのCOO(最高執行責任者)を務めていた。日の丸中小型液晶会社は一皮むけば、ソニーを筆頭に様々な思惑&打算が透けて見えてくる。取らぬ狸ならぬ、中小型液晶の皮算用にならなければいいのだが……。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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