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快走続くアシックス、世界トップ3入りへの成算は?カギは愛好家ニーズ開拓と価格競争力

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 そんなアシックスを襲ったのがバブルショックだったが、その後の経営危機を救ったのが、現在の大黒柱ランニングシューズへの経営資源集中と、スポーツファッション事業の育成、並びに海外進出強化だった。

 赤字経営中の96年には、米国のゴルフ用品販売子会社売却などのリストラを進める一方、再成長モードに戻った02年には現社名変更(77年)時に廃棄したスポーツシューズブランドの「オニツカタイガー」をスポーツファッションブランドとして復活させた。

●脱・競技者志向で愛好家層開拓なるか

「今のところ、アシックスの成長に懸念材料は見当たらない」(業界関係者)が、中計の残り2年間でプーマに肉薄するのは容易ではなく、クリアしなければならない課題が多い。

 その最たるものが、創業期から引きずっている「競技者志向」だ。アシックスの強みは国産バスケットシューズ開発の伝統を誇る機能性。特に85年設立の「スポーツ工学研究所」が一流ランナーの走行データを集め、そのデータを基に最先端のランニングシューズを次々と開発してきた。したがって、機能性は競技ランナーとシリアスランナーから高い評価を受けているが、ファッション性ではカラフルなデザインのナイキやプーマにかなわない。このため「市場で最大需要層の愛好者クラスのランナーに、ほとんど食い込んでいない」(同)のが同社の悩みだ。

 この弱点がもろに出ているのが、スポーツウエア事業といえる。スポーツウエア部門が売上高全体に占める比率は、世界市場上位3社が軒並み30%台なのに対し、アシックスのそれは19%(13年3月期)にとどまる。ファッション性を追求した「オニツカタイガー」ブランドのシューズとウエアも、市場での知名度は高いものの売上高は約93億円(13年3月期)しかなく、売り上げ全体への寄与度は小さい。

 新興国市場の開拓も遅れている。ナイキやアディダスは新興国市場の売上高が全体の40~50%に達しているが、アシックスは10%程度。先進国市場への依存度が極めて高く、海外事業としてはバランスを欠いている。

 アシックス製シューズの売れ筋は、1万2000~5000円のモデル。国内と欧米なら品質の良さとブランド力で楽に売れるが、新興国市場のランナーにとっては高嶺の花。70ドル前後のラインナップを豊富に揃えている競合他社とは価格競争ができない。

 これにはアシックスも危機感を持ち、対応に乗り出している。12年11月にはナイキとプーマで商品企画やマーケティングを担当したフランス人のジョン・モレンジャー氏を常務執行役員としてヘッドハンティング、ファッション性や価格競争力の強化を急いでいる。

 また、世界を5地域に分け、日米欧以外の市場を開拓する体制も整えた。ランニングシューズの販売拡大、現地の好みに合わせたデザイン・機能の強化を図り、現地採用の人材登用にも努めている。

 アシックスの世界市場3位入りに対しては、「中計最終年の16年3月期はさすがに無理だろうが、東京五輪開催年の20年には、あり得ない話ではない」との見方が業界内には強い。アシックスの快走が、さらに加速することに期待したい。
(文=福井晋/フリーライター)

BusinessJournal編集部

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