そんな中、スポーツ用品の世界市場で“銅メダル獲り”を狙っているのが、現在、売上高ベースで同4位のアシックスだ。同社は最近の業績も好調で、例えば13年3月期の連結決算は、売上高が過去最高の2602億円。営業利益は前期比4.9%減の187億円だったが、最終利益は前期比9.2%増の138億円を記録した。
アシックスが2月4日に発表した、14年3月期第3四半期累計(13年4-12月)連結決算も好調だ。売上高が前期比25.1%増の2383億円、営業利益が同43.6%増の236億円、最終利益は同19.6%増の150億円。これで通期の業績予想(売上高3270億円、営業利益255億円、最終利益150億円)達成も確実視されている。
10年以来4期連続の増収を支えてきたのは、同社の主力事業である「スポーツシューズ類」の売上伸長だ。これを13年3月期実績で追ってみると、同事業の売上高は前期比5.6%増の1927億円(全体売上高の74.1%)。1期前の12年3月期実績でも同事業の売上高は前期比4.4%増を記録している。中でも大黒柱のランニングシューズが、世界的なランニングブームを追い風に順調に売れている。
同社のランニングシューズが売れているのは、世界中の競技ランナーと「シリアスランナー」(スポーツクラブなどで日常的に訓練しているランナー)からアシックスブランドが圧倒的に支持されているからだ。例えば、12年2月に開催された東京マラソンでは、2時間台でゴールインした上級参加者が履いていたシューズの半分以上がアシックスブランドだった事実からもうかがえる。この現象は、ボストンマラソン、ロンドンマラソンなど他の世界主要マラソン大会でも同様だ。
マラソンは、健康志向の高まりに加え、シューズがあれば誰でも始められる手軽さから世界的なブームになっている。矢野経済研究所の調査(推測)によれば、12年の国内スポーツシューズの市場規模(金額ベース)は前年比5.7%増の2868億円、うちランニングシューズは同10.1%増の544億円。13年もスポーツシューズは前年比5.1%増の3016億円、うちランニングシューズは同4.5%増の568億円。「東京五輪開催の20年までは、控えめに見てもこのペースで伸び続ける」(アシックス関係者)とみられている。
●世界市場3位という壁
アシックスはこの有利な市場環境と商品競争力を背景に、2年後の16年3月期連結決算で、売上高4000億円以上、営業利益400億円以上の目標(10年11月発表の中期経営計画)を立てているが、その狙いは、世界ランキング3位入りを果たすことだ。アシックス関係者は、「五輪では銅メダルを獲得した3位と、メダルなしの4位とでは、力量は僅差でも世間の見方はまったく異なり、ほとんどの人はメダリスト以外の名は覚えていない。ビジネスでも同じで、メダルプレーヤーにならないと、世界市場ではいつまでたっても知名度が低いまま」と明かす。
だが、現状ではメダリストの背中は遠い。12年度の業績を比較すれば一目瞭然だ。