実は、生命保険業界は、若者の保険離れに頭を抱えている。
生命保険文化センターの「平成25年度 生活保障に関する調査」によれば、20代女性の生命保険加入率は1993年の67.5%がピーク。その後は減少傾向で、2013年は56.8%。20代男性も89年の72.1%がピークで、13年は52.4%となっている。非正規雇用の増加による収入減や晩婚化で生命保険に入る年齢が上昇したことなど、いくつもの原因が考えられるが、加入者の保険料が収入源の生命保険各社にとっては、縮小傾向は頭の痛い現実。
そこで、若者に人気のあるタレントを起用し、加入者を増やそうという狙いなのだが、そのテレビCMで勧められているのは、割高な保険商品ばかりだ。
そんななか、生保最大手の日本生命は、死亡保険と医療保険などを組み合わせた主力商品の保険料を、4月から値下げすると発表した。20代の保険料は約7%下がり、標準的な契約で月々700円程度安くなる。新たな顧客開拓のため、若年層の値下げ幅を大きくするというわけだ。
しかし、実際には大した値下げにはなっていない。「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/4月5日号)の記事『日生の保険料値下げは高額な保障のみが対象』によれば、今回の日生の保険料値下げは、以前からある「高額割引制度」を拡充したものなのだが、「高額割引の対象となるには、文字通り保険金額が3000万円以上の“高額”でなければならない。(略)死亡保障などの保険金額が2000万円未満であれば、割引の恩恵は受けられない。
●大手生保はネット生保に比べて割高
例えば、値下げしても、30歳男性(保険期間10年、保険金2000万円)のケースでは、月額保険料は5400円。保険金100万円当たりの保険料単価は270円だ。これに対し、低価格が売りのネット生保では、月額保険料は2200~2300円、保険金100万円当たりの保険料単価は112~117円。つまり、大手生保はネット生保の2倍超と極めて高いことがわかる。
今後はますます、ネット生保の安値競争が加速しそうだ。例えば、ライフネット生命が、5月から死亡保険等の一部商品(定期死亡保険と終身医療保険)で保険料を改定し、業界最安水準になるという。
ライフネット生命は、「若い世代の保険料を半分にして、安心して子どもを産み育てることができる社会をつくりたい」とのコンセプトで08年に開業したネット生保。開業から6年、契約件数も20万件を超え、経営基盤も安定したために、今回、初の商品改定に至ったという。ポイントは大きく3つ。
定期死亡保険は30歳男性(保険期間10年、保険金1000万円)のケースでは、月額保険料は1328円から1230円へと値下げし、これまでの最安値だったアクサダイレクト生命(1240円)を下回った(保険期間も70歳から最長80歳まで延長した)。