だが問題は、15年度以降の財政の姿である。25年度以降は「団塊の世代」のすべてが75歳以上の後期高齢者となる。その結果、2000年時には900万人に過ぎなかった後期高齢者(75歳以上)は25年には2000万人に倍増し、社会保障費の急増が予測されている。現行制度のままでは、特に医療費や介護費がこの頃から急増していく。
このような影響を受けて、筆者の長期推計(簡易試算)では、14年度・15年度の消費増税を実施しても、50年度の国・地方の基礎的財政収支(対GDP)は7.9%の赤字、公債等残高(対GDP)は約500%となり、財政は非常に厳しい状態になる。
その際、50年度の基礎的財政収支を均衡させるには(消費税率換算で)16%の追加増税が必要であり、それは現行8%の消費税率が26%になることを意味する。
●求められる、財政・社会保障改革への議論の深まり
もっとも、このような長期試算は成長率や金利の前提に依存するとともに、20年超もの期間に渡る推計の精度に対する問題もあり、試算結果の解釈は慎重かつ冷静に評価する必要があるが、現状を放置すれば財政が持続不可能であることは明らかだろう。
このような財政の悲惨な現状を財務省は深く認識しているから、一定の批判を覚悟で、今回の長期試算を公表したのに違いない。まず、財政の深刻な状況を、財政の中期試算(例:5-10年)のみでなく、長期試算(例:50年)を含め、いろいろな角度で国民に伝達しない限り、改革の議論は深まらないからだ。
長期試算に対する批判は、国立社会保障・人口問題研究所の「将来人口推計」などでも見られるものであり、このような試算は政策立案を行う際の「ツール」に過ぎず、むしろ重要なのは政治が「財政の長期試算」を財政運営や行財政改革でどう活用するかである。今回の公表を契機に、財政・社会保障改革の方向性について徐々に議論が深まることが望まれる。