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かつら市場、なぜ異変?女性用と医療用が拡大、多彩なサービス続々で購入が身近に

かつら市場、なぜ異変?女性用と医療用が拡大、多彩なサービス続々で購入が身近にの画像1「Thinkstock」より
 女性用かつらのイメージが変わってきた。白髪や薄毛が気になる女性だけでなく、ファッション感覚でヘアアレンジを楽しむ女性が増えたためだ。大手かつらメーカー・アデランスによれば、男性は欠点を隠す目的でかつらを買うことが大半だが、女性の約4割はファッションの延長として購入するという。

 女性用かつらは「ウィッグ」とも呼ばれ、ファッション性が高いものが増えている。自毛となじませてボリュームをアップさせたり、和装やパーティーの時など、服装やシーンに合わせてヘアスタイルを変える人も多い。矢野経済研究所が2012年に発表した調査結果によると、かつらや増毛関連の毛髪業市場は、11年度で約1330億円となっており、男性用の需要は縮小傾向にあるという。その背景としては、坊主頭やスキンヘッドにオシャレなイメージが定着しつつあることや、発毛や育毛などの市場が成長していることがある。そのような中、男性用かつらの需要減を補うかたちで女性用かつらが拡大している。

●かつら市場、医療用と女性用が牽引

 かつらの価格はピンからキリまであるが、女性用の場合、オーダーメイドで平均40~50万円。既製品でも10万円程度するため、一般的にかつらは高額な印象が強かった。しかし近年は、新興企業の参入により、ネット通販やテレビショッピングで手軽に購入できるかつらが増えたため、市販品の価格は下落傾向にある。

 アデランスやアートネイチャーなど、既存の大手かつらメーカーも、駅ビルやスーパーへの出店を加速。また、美容室チェーンの田谷が自社開発のかつら販売を始めた。購入後も全国の美容室店舗でカットなどの調整が可能なため、普段の美容院通いで手軽に購入し、維持できる。こうした販売チャネルの拡大により、女性用かつらに対するマイナスイメージは薄れ、身近なファッションアイテムとして認識されつつある。

 かつら市場の中でも、ニッチな分野として成長著しいのが医療用かつらだ。通常のかつらと何が違うのか。医療用かつら専門店のanによれば、「医療用かつらは、お薬による脱毛や事故などによる髪の脱落にお悩みの方が、一時的に着用されるかつらです」と説明する。明確な定義はないものの、「投薬治療を行う場合、脱毛による頭のサイズの変更や、頭皮が普段よりデリケートになる」(同)といった事情から、医療用かつらを専門とする業者も増えてきた。

●購入費を補助する企業や自治体が登場

 特に女性の場合、一時的でも髪を失うことは大きな精神的苦痛となるが、医療用かつらも数万円から数十万円と高額のため、購入をためらう人が少なくない。そうした闘病生活中の外見的な悩みを解決しようと、低価格で必要な期間だけ貸し出す医療用かつらのレンタルサービスが広まってきた。

 医療用かつらの通販サイト「アンベリール」を運営するセラヴィでは、初期費用(1万4800円~)を払えば、大手なら30万円程度する高品質のかつらを1日あたり150円で利用できる。実店舗を持たず、工場から直接仕入れることで、「市販品の半額から3分の1以下」(同社)での提供が可能だという。また、宅配無料試着サービスがあるため、自宅で納得がいくまで品質やフィット感を確認できるのもうれしい。往復送料や手数料は一切無料だ。

 かつらの購入費を補償する仕組みも現れた。アデランスはAIU損害保険と業務提携し、抗がん剤治療による脱毛を理由とした同社製かつらの購入費を、医療保険の特約支払い対象にする。かつらの購入費を保険でカバーするのは、業界初の取り組みとなる。

 また、山形県では14年度から医療用かつらの購入費を補助する全国初の制度を導入した。県は市町村と折半で最大1万円を負担する方針だ。

 通常、髪が抜けてから生え揃うまでは1年半程度かかるという。その間、抗がん剤治療を受ける女性の多くは、精神的な不安と肉体的な苦痛を抱えながらも、日常生活では“がん患者ではない普通の人”としての暮らしを望む。こうした行政や民間企業の取り組みが増えることで、社会復帰の後押しや以前の自分を取り戻すきっかけとなることに期待したい。
(文=千葉優子/ライター)

BusinessJournal編集部

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