繊維の名門であるそのユニチカの経営危機が今年5月、表面化した。ユニチカは5月26日、三菱東京UFJ銀行をはじめとする取引銀行に総額375億円の金融支援を要請した。これを受け27日のユニチカの株価は一時、前日比約3割安の41円まで下落。26日にユニチカが出した中期経営計画からは、名門復活の可能性が見えてこなかったからだ。
中計によると2015年3月期の連結売上高は前期比1%増の1650億円で、事業構造改革費用として440億円の特別損失を計上。税引き後利益が370億円の赤字(14年3月期は5億8300万円の黒字)となり、160億円の債務超過に陥る可能性が浮上した。債務超過を防ぐため、7月末に三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三菱UFJ信託銀行の3行と、日本政策投資銀行などが出資する再生ファンド、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)に対して議決権のない優先株を発行して、金融支援を受ける。
銀行3行から調達する275億円は全額借入金の返済に充てる。JISが組成する投資組合から調達する100億円は成長が見込める食品包装用フィルムや、樹脂など高分子事業の設備投資に充てる。1600億円の有利子負債を15年3月期末には1260億円に圧縮。14年3月末の自己資本比率は6.1%だが、金融支援により8.9%程度に回復するとしている。中計の最終年度である18年3月期の連結売上高は繊維事業のリストラで1450億円となり、14年3月期の1626億円から10%減る。一方、営業利益は67億円から140億円へと2.1倍を見込んでいる。
銀行からの金融支援では、借入金を株式に切り替えるデット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)を利用する。ユニチカが実際に使えるのはJISが出す100億円だけだが、果たして100億円で揺るぎない収益基盤を築くことができるのかが、今後のユニチカを占うポイントになる。しかし、JISが引き受ける優先株の配当率は6%と高く、年間6億円の配当金を支払うことになる。経営責任を明確にするため、6月27日付で安江健治社長(66)が取締役相談役に退き、後任社長に注連(しめ)浩行取締役常務執行役員が就任する。
●長い不況のトンネル
ユニチカは1889年(明治22年)創業の尼崎紡績が発祥だ。1918(大正7年)に摂津紡績と合併して大日本紡績となり、東洋紡績(現・東洋紡)、鐘淵紡績(現・カネボウ)とともに「三大紡績」の一角を担い、日本の基幹産業であった繊維産業を支えた。戦後、ニチボーに社名を変え、69年には子会社だった日本レイヨンと合併してユニチカになった。