なぜ、レンタルビデオの貸出期間は1週間なのか?
これも、最初は社内の女性社員からのクレームに、スポットを当てたことがきっかけだったのです。
クレームとは「神の声」
確かにクレームの中には、単なる怒りのはけ口的な「モンスタークレーム」があります。しかしそうであっても、クレームを、単にクレームとして捉えてしまうとなんの発展もありません。その裏側には、消費者やユーザーの潜在的なニーズが隠れています。リーダーは、そこを見るようにしなければいけない。
「こういうものがあったらいいな」
「こういうふうにしてくれ」
という「神の声」でもあるのです。
ビデオレンタル業界の方からお聞きした話ですが、一昔前は「2泊3日」のレンタルが主流でした。しかしこれでは、ユーザーは、「何本も借りてしまったが、観ないで返す」とか、「週末がんばって観るようにしているが、平日借りてしまうと、レンタル期間を延長して延滞金を取られる」「借りたけど、結局見ずに返却する」といったケースが多かったようです。そうすると、ユーザーは結局面倒くさくなって「借りなくていいや」となっていたんですね。
そこで、ある社員が社内に提案したのが、今では主流の「1週間レンタル」でした。レンタル期間を1週間にすると、働いている人でも余裕をもって観ることができる。その結果、「次は何を観ようか」と返却後に継続的に利用されることにもつながり、非常に合理的でロスがない。でも当時は、社内の猛反対にあったそうです。
その反対の理由は、「1週間も貸して、返ってこなかったらどうするんだ」という心配でした。ビデオを貸しているのだから、返してもらえないような長いレンタル期間は設定すべきではない、という「企業側の論理」だったのです。
お客視点に立たないと、目の前のチャンスを逃す
しかし、お客様視点に立ってみると、明らかに2泊3日は短い。借りたらすぐに観なくてはいけないというストレスになってしまう。本来は「1週間の予定はわからないが、空いた時間に観よう」というのが、お客様の心理です。すると、お客様は「来週は忙しいから借りるのをやめよう」ということにもなるのです。これは、本来でいえば、機会ロスですよね。継続的に利用してもらったほうがいいはずです。そのチャンスを逃しているわけです。
そのようなお客様のクレームを、ようやくキャッチできたことで、1週間レンタルが実現したそうです。その業界関係者の方は、「レンタル企業は、お客様からのニーズを捉えることを見失っていて、そこで、ものすごく売り上げを落としていたかもしれない」と話していました。